こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。
本日は、若き日の歌、と題してお送りします。
「人は、泣きながら生まれてくる」
五木寛之の言葉だ。
今朝、目覚めると、頬を涙が伝って流れた。
夢にうなされたのだ。
若き日の哀しみは、いつまでも去る事がない。
心にいつまでも巣食っている。
起き上がり、自分に呟いた。
もう終わったんだ。あの日々の苦しみは。
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出口がどこにもないんだ。
あるのは、歌だけだった。
歌だけが、心の救いだった。
家を出ようと思っていた。
だけど、今の自分には、何もない。
世の中に出て、ひとり生きていく力なんて、ないんだ。
結局、今のまま、親に頼って生きるしかないんだ。
どこといって、自分が人一倍不幸なわけじゃない。
来る日も来る日も、涙を流さない夜はないけど、
ここを出て行って、ひとりの寂しさや悲しみが消えるわけじゃない。
そう考えてしまう自分がいた。
何もできなかった。
死のうと思っても、できなかった。
悲しみにまみれて、日々は過ぎていった。
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ときに、若さは残酷だ。
友はみな、私から離れて行った。
学校では、いじめられた。
一日、口をきかない日も数えきれないほどあった。
学校を休んでも、地獄。
行っても、地獄。
人が嫌い。
信用できない。
親も、世間の体裁ばかりを気にした。
誰もが、自分を被害者だと思っていた。
自分が、自分を一番嫌いだった。
好きだった人も、目の前を通り過ぎて行くだけだった。
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その頃、小鳥を飼った。
ひとりぼっちの自分の友だちにしようと思った。
けれど、自分を好いてはくれなかった。
愛情を注ぐ事ができず、あっけなく、亡き骸になった。
自分を愛せない人間には、他人は愛せない。
小鳥ですら愛せない。
残った鳥かごは、すぐに捨てた。
いつまでも、苦しい想いだけが残った。
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学校を休んでいると、ときどき担任の教師がやってきた。
私の部屋に上がりこみ、何が好きかと私に尋ねた。
歌や小説が好きだと答えると、歌を歌ってくれた。
岡林信康の「チューリップのアップリケ」。
若く大柄な、男の体育教師が、かぼそい声で。
私はいよいよ哀しくなった。
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家にいるのがつらくなると、街を彷徨い歩いた。
わけもわからず、悲しみの捨て場所を探しに。
あちこちで、万引をやった。
不思議と捕まらなかった。
私はその頃、なにを欲していたのか?
話を聞いてほしかったのか?
哀しみを伝えたかったのか?
だけど、気にかけてくれる大人はいなかった。
私は、野放しの少年ギャングだった。
若い頃に戻りたいという人は幸せな人だ、と私は思う。
私は、ぜったいに、戻りたいとは思わない。
あの頃の、無間の孤独地獄に、二度と帰りたくはない。
かすかな光さえ無い夜は、もうたくさんだ。
少年の頃には翼があって、夢の中で空さえ飛べた。
それが今は、どうだろう?
大空を嵐が吹き荒れ、翼は傷つき、地べたを這いずり回る事しかできない。
鏡には、自意識過剰の、醜い顔の自分が映っているだけ。
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私は、最も荒れていた若い頃の、一時期の記憶を喪失している。
学校をサボり、街を彷徨していた、いちばんつらかった頃の記憶が、すっぽり抜けているのである。
その頃、なにを考えてなにを為したか、過去を振り返っての憶測に過ぎない。
これは、生きていくための自衛本能なのかもしれない。
その記憶が、突如、夢の中で甦る。
昨日鳴る、鐘の音のように。
昨日鳴る鐘の音 甲斐バンド
なにかを創り出そうとする人間は、心の奥に、闇を持っている。
弱き事は、恥ずべき事ではない。
「文化」と書いて、はにかみ、とルビをふる。
これらを私に教えてくれたのは、含羞の人・太宰治である。
若き日に悶悶と苦しむ者よ。雛鳥たちよ。
大いに悩み、泣き叫ぶがよい。
それは君たちが、この世に生まれ出で、
なにものかになろうとするための、生みの苦しみなのだ。
すべての負の出来事を逆手にとって、宝玉とする事ができる、
それこそが若さの特権だ。
若き者よ、「心の王者」たれ。
この、太宰治の小品をここに捧げ、筆をおくことにしよう。
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