MIDNIGHT HERO

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脚本家・山田太一の世界・序章。世の中に適応できないことの魅力。

街で話した言葉―山田太一談話集

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

 

皆さんは、山田太一という脚本家を知っていますか?

そのドラマを観たことがありますか?

 

私は若い頃から、その作品世界に触れ、同時代を生きてきました。

山田太一ドラマを、世の中の人に広く紹介すること。

 

これは、私のライフワークのひとつだと、ずっと心の中で想いを温めてきました。

私もずいぶん馬齡を重ね、ようやく、この仕事を始めてみようという気になりました。

 

今回は、その序章です。

もう森へなんか行かない  フランソワーズ・アルディ

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この曲は、ドラマ「沿線地図」の主題歌。

最近、録画したDVD で観ました。

やっぱり山田太一さんはすごいと、あらためて思いました。

 

数年前、BSトウェルビで再放送があったのです。

とにかくBS トウェルビは、いいドラマを再放送してくれるので、ドラマファンにはありがたい限りです。

山田太一と言えば「ふぞろいの林檎たち」でしょうか?

山田太一の代表作と尋ねられ、まずみんなが思い浮かべるのが「ふぞろいの林檎たち」だと思います。

もう少し年配の方やドラマ通の人だったりすると、「岸辺のアルバム」という答えが返ってくるかもしれません。

しかし、私の世代だとどうしても「ふぞろい」なんです。

 

どうしてかというと、これは落ちこぼれの、3流や4流と言われている大学生と専門学校生の話。

世の中のほとんどの一般庶民は一流ではないわけですから、彼らの悩み多き日常が視聴者の心をつかんで、ひとつの大きなムーブメントとなりました。

 

当時の大学生や専門学校生なんかは、みんな観ていたという気がします。

しかし、私は生来のヒネクレ者のせいか、山田太一ドラマの中で、なぜか好きになれない。

 

山田太一さんには申し訳ないけれど、一番の代表作とは思えないんです。

 

それは、私がその作家の世論的な代表作を手放しで持ち上げたがらない、いわゆるスノッブ(俗物)であり、ディレッタント(芸術愛好家)であるせいかもしれません。

 

ですが、そこを除いても、山田太一さんには「ふぞろい」をはるかにしのぐ、大傑作の数々がある。

 

私としては、そこを一番言っておきたいと思います。

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ところが最近、ある批評家の山田太一論を読んで、今ひとつ「ふぞろい」を好きになれない、もうひとつの理由がわかったような気がしました。

 

山田太一さんは、世の中に適応できないことの魅力みたいなものを、常々メデイアで話されていて、生活者としては落伍者だと思っていた自分の、大きな支えになっていました。

 

私の共感する主人公たちは、世の中の不適応者で、孤独の中であがいていたような人物でした。

しかし、エリートでない学生の群像劇だと、大多数の若者はその中に含まれてしまいます。

 

登場人物たちは、多少の不満こそあれ、仲間がいて、コミュニティを作って、平凡ではあるが、どこにでもある日常を生きて、一人、孤独にさいなまれることはない。(唯一、例外なのが国広富之の役でしょうけど。)

 

人生をはみ出しかけている孤独な主人公の呟き、すなわちモノローグ(登場人物が視聴者に直接語りかける手法)のないドラマが成立しているのです。

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山田太一さんは、落ちこぼれ学生の方が魅力がある、というテーマを描いてみたかったと言っていました。

 

ですが、私からすれば、登場人物たちは世の中に反発しながらも仲間と支え合い、寄り添いあって生きているという気がする。

私には、そこのところが、これまでの山田太一ドラマの主人公との大きな違いだと感じていたのです。

 

「それぞれの秋」、「岸辺のアルバム」、「沿線地図」、「想い出づくり。」「早春スケッチブック」。

これらの主人公は、みなモノローグで視聴者に語りかけます。

 

彼らは、共同体であるはずの家族の中で、孤独を抱えて生きていました。

 

それがなにより、私が山田太一作品に共感を覚えていた理由ではなかっただろうか…。

そう思ったのです。

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山田太一作品との出会い。

もうひとつは、サザンの曲がドラマの全編にわたって流れる、というのも要因かもしれません。

 

はあ? という方がいて当然です。

というのは、私が山田太一という脚本家を知ったのは、甲斐よしひろのラジオ番組を通してなのです。

 

当時、甲斐よしひろは、番組の中で山田太一さんの作品について、たびたび語っていました。

NHKのドラマ「夕暮れて」のシナリオ本は、海外のレコーディングに持参したとか、「早春スケッチブック」の岩下志麻さんの存在感がすごいとか、しゃべっていました。

 

そして、山田太一作品の新作がスタートするというニュースです。

放送開始いきなり驚きでした。

 

ドラマの冒頭から流れる「いとしのエリー」。

しかも、ドラマで流れるのはすべてサザンの曲。

 

当時、甲斐バンドと人気を二分するバンドだったサザンの曲を、山田太一さんのドラマで否応なく聴かされるのは、やはり私にとって、苦痛だったのだと思います。

 

無名時代のサザンを、いち早く自分の番組でプッシュしたのが甲斐よしひろでしたから、なんとも言えない気分でした。

 

ですが、これはあくまで私の個人的な事情というだけで、作品自体の価値とは何の関わりもありません。

ドラマの全編で、ひとつのバンドの曲を流すという試みは、斬新で画期的なものでした。

 

それがサザンだったというのも、80年代の空気にぴったりフィットしていた。

私がこの企画に携わっていたとしても、大賛成したと思います。

批評する思考の欠如した日本人。

今回は、私の山田太一論・序章です。

抽象的でわからないところが多かったと思いますが、わかりにくい分は、個々の作品を論じる中で、その素晴らしさをお伝えしたいと思っています。

 

たとえば、サブタイトルに挙げた、世の中に適応できないことについて。

そりゃダメに決まってるだろう。

生活力が無いってことじゃないか。

何を言ってるんだ。

 

普通に考えたら、それが世間一般の常識だし、いつかその価値観をそのまま受け入れて、みんな生きていくことになる。

だけども、現実には世の中に適応できなくて、苦しんでいる人はたくさんいるわけです。

そういう当たり前と思っていた価値観のために、自殺する人だって大勢いるだろうと思うのです。

 

本当に、世の中に適応することが、すべて なんだろうか?

むしろそういう生き方を、本当に実現して生きている人は少ないんじゃないか?

 

自己に対しても他者に対しても、批判することなく、生活に流されて、当たり前という観念に支配されて、生きているだけなのではないか?

世の中に簡単に適応することの方が、よほど気持ち悪く、薄気味悪いことなんじゃないか?

 

山田太一さんのドラマは、そんな問いを投げかけてくるのです。

その言葉には、はかり知れない重みがある。

山田太一さんは私が真に尊敬する、心の師とも言える方です。

 

10代から現在まで、ほぼ半世紀にわたり、メデイアで知り得た情報は必ずチェックし、ドラマ、書籍、演劇と、その作品、発言に接してきました。

 

福岡の講演会では、ぶしつけに、お声を掛けさせて頂いたこともあります。

山田さんは、見ず知らずの私に、気さくにお話ししてくださいました。

 

日本映画専門チャンネルさん、各民放各局さん、NHKさん。

山田太一作品を、是非再放送してください。

よろしくお願いします。

ドラマ「沿線地図」で流れていた甲斐バンドの曲。

かつて大和書房という出版社が、山田太一や倉本聰のシナリオ集を出していて、私は観てないドラマ数冊を残して、ほとんど買いました。

現在では絶版になっています。

 

ドラマの終盤、酔客役の中野誠也が、商店街をフラつきながら、「ヒーロー」のサビを口ずさむシーンがあるのです。

そこで、「沿線地図」のシナリオで「ヒーロー」の流れるシーンがト書(セリフではない説明の部分)では、どうなっているのかを確かめてみました。

 

そこでは「ヒーロー」ではなく、桑江智子の「私のハートはストップモーション」を口ずさむト書となっていました。

 

当時、ヒットチャート1位あたりを賑わせていた曲を演出家が採用したのでしょうか。

このシーンでは曲の頭から終わりまでが流れました。

また、岸惠子がおかみさん役だった電気屋の店頭でも、「ヒーロー」は使われていました。

 

あわせて、サザンの「気分次第で責めないで」もチラチラ使われていましたね。

スナックかもめでも、その時代のヒット曲は、よく流れていました。

 

本日はこれで終わりです。

おやすみなさい。

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