こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。
4月以来、久しぶりのブログです。
このところ、菅田将暉、小栗旬、西島秀俊、綾野剛らが演じるミステリー、サスペンスドラマを立て続けに観ていました。
そこで今回は、特に私が面白かったドラマを紹介しようと思います。
「 MOZU season 1 百舌の叫ぶ夜」ができるまで。
「MOZU」は、2014年、TBS とWOWOW が共同製作したドラマの第2弾として、両局で放送されました。
原作は、逢坂剛の同名小説。
小説の事件の枠組みと人物相関性を踏襲する以外は、脇筋や登場人物を大きく膨らませ、まさに「原作」というだけで、ドラマと小説はまったく別物となっています。
そもそも原作小説は、1980年代に発表されたもので、長年映像化はされていませんでした。
ドラマのキャッチコピーにある「映像化不可能」の文字は、大掛かりなテロや組織犯罪を描くだけの技術が、物理的になかったためとも言えます。
しかし、その手の警察内部の対立や隠蔽を、ドラマとして組み立てる技量が、製作する側にもなかったのではないでしょうか?
1980年代までの刑事ドラマは、まだ警察と犯罪者との格闘を描くものだと視聴者も製作者も思っていたのではないかと思われます。
(1980年代から始まった「火曜サスペンス劇場」は、私はまったく観ていないので、これは憶測に過ぎませんが、いかがでしょう?)
1990年代も終盤、フジテレビの「踊る大捜査線」が出て、初めて警察内部の確執や対立が表舞台に現れます。
そこから、新たな時代が始まったように思います。
逢坂剛の百舌シリーズに、ようやく製作側が追いついたと言えるでしょう。
Episode #1 都心で起きた爆弾事件…妻を失った公安のエースVS記憶を失った殺し屋
共同製作第1作「ダブルフェイス」の成功。
このドラマの成功の鍵を握ったのが、キャスティングと製作スタッフです。
2012年、「MOZU」の前に、TBS と WOWOW が初めて共同製作した「ダブルフェイス」というドラマがありました。
これは、香港映画「インファナル・アフェア」のリメイクで、西島秀俊と香川照之が主演を務め、警察と犯罪組織のスパイを双方が演じたドラマでした。
このドラマも観ましたが、香港版よりはるかに面白く、よく出来た作品でした。
これはハリウッドでも「ディッパーテッド」のタイトルでリメイクされ、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン主演、マーティン・スコセッシ監督で、アカデミー賞のほか数々の賞に輝いています。
「MOZU」は、「ダブルフェイス」のメインキャストをほぼ引き継ぎ、同じスタッフで製作されました。
西島秀俊と香川照之のWキャストありきで選ばれた原作が、「MOZU」だったと言ってもよいのではないでしょうか。
また、脇を固めるキャストが素晴らしい。
狂気をはらんだ謎の殺し屋・百舌を演じる池松壮亮。
公安の女刑事役で、ボーイッシュでクールな魅力を湛えた真木よう子。
警察の闇を追う監察官役、小日向文世。
闇組織の暗部を引き受け、百舌に劣らない狂気を湛えた謎の男・東を演じる長谷川博己。
日本のドラマとは思えない、大掛かりでド派手な演出に支えられ、彼らの演技が冴え渡っています。
「MOZU」の斬新さと切り口の面白さ、映像の迫力。
それでは、ドラマ「MOZU」の核心に迫ってみましょう。
これが長年ドラマになりえなかった、その事実こそ、この新しい警察ドラマの魅力と言えます。
しかし、海外のミステリーに詳しい人であれば、警察内部の暗闘を描く小説やドラマに接する機会は多かったはず。
ましてや海外には、古くから警察小説、警察ミステリーというジャンルがあるのです。
だから、日本では、長年ドラマよりも小説の方が先を行っていたはず。
しかし近年では、続々と公安警察と刑事警察の対立を描くドラマや映画が作られるようになりました。
これも「MOZU」以降のことだと思えるのです。
特に倉木を演じた西島秀俊は、以降公安警察官や特殊任務を帯びた主人公を次々と演じるようになります。
この西島のキャラクターは、他を寄せつけない魅力があります。
もっとも、西島秀俊という役者は、他にも多様な役柄をこなせることを多くのドラマで証明していますが。
では、このドラマの面白いところは、どこかと言えば…。
その答は、観る人によりけりですが、私ならこう説明するでしょう。
クライムサスペンスにふさわしい、横溝正史ばりの、おどろおどろ感。
それは、記憶喪失に陥った、百舌という鳥と同じ殺しの手口を使う、謎の殺し屋…。
その百舌を追い詰めるのは、警察というより、むしろ殺しの雇い主であった闇組織。
そして、その闇組織を操る黒幕の正体…。
その陰謀に振り回され、妻の死の謎を追う、倉木という公安警察官の鬼気迫る執念。
職務として陰謀を追い、警察内部の闇を暴こうとする監察官と、そのもとで動く公安の女警察官…。
複雑に絡まり合う謎の連鎖が闇を濃くし、病理性を秘めた多くの人物像を歪め、いびつにあぶり出し、光を当てる。
その映像詩は、時ならず狂気をはらみ、取り止めもなく周囲に散逸する。
それらすべてが、「MOZU」の魅力となる。
Final Episode 最終対決 爆弾に狙われた空港…倉木が辿り着く真実
さて、ここまでネタバレ無しに、なんとか「MOZU」というドラマの魅力を知ってもらおうと書いてきました。
あとは、あなたがAmazonプライム・ビデオで、このドラマを観ていただくだけです。
最後に。
ドラマは、season2 まであり、原作の百舌シリーズも2巻目は、同じタイトルの「幻の翼」となっています。
しかし、season1 よりもなお、原作とは別物です。
それでも、原作小説は、それなりに面白く読むことができます。
今更ながら、冒険小説に目覚めた小学生のようですが、今から第3巻目をひもとくところ。
それでは、今夜はこのへんで。
おやすみなさい。