MIDNIGHT HERO

Deracine's blog. Music, Movies, Reading ,Play,Sports and daily shit.

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初恋の記憶。

小学校一年か二年、七つか八つの頃だった。

その人のことは、名前も容姿も声の抑揚も、はっきりと覚えている。

 

なぜその記憶が鮮明であるかというと、いくつか理由がある。

 

その頃の母との思い出が、生々しく残っていて、私は母に、その人のことが好きだとあからさまに伝えていた。

恥じらいもなく、あえて言えば、口ぶりに照れ笑いを含ませながら。

 

 

今となっては、そんな自分が嘘のようだが、その告白の一言一句をいまだに覚えている。

(そののち、私は母へこんな告白をしたことを、つくづく後悔した。)

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ある日、くだけた感じの、他校の先生が、授業にやってきた。

授業のあと、その先生は、このクラスの人気者は誰か、というようなことをクラス全員に尋ねた。

 

みんながその人を指して、○○さんです、一番成績もいいんです、と声を上げた。

すると、その先生は、その人の体を胴上げするように抱え上げた。

 

おかっぱ頭に近い髪の毛が上下に揺れ、その人の歓声と笑顔があたりに弾けていた。

私は、遠くの虹を見るようなまなざしで、そこにいた。

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その人は、それほど身の丈がある方ではなかったが、私はクラスで一番か二番目くらいに背が低かった。

だから、その人より私の方が小さかった。

 

その人は、私と接する機会があると、私の話を聞き、そうなの、と頭を撫でてくれることがあった。

ともに異性の意識が薄い、幼い頃の淡い友愛だった。

彼女との会話は、姉と幼い弟のようだった。

 

それでも、月日の経つにつれ、その人と接するときの胸の鼓動は、大きくなった。

話し掛ける言葉も、どこかぎこちなくなり、取ってつけたような会話になった。

 

思えば、それが記憶に残っている最後の会話だったのかもしれない。

その人は三年生になる前に転校してしまった。

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その人と再会したのは、高校一年のときだった。

小さな町の唯一の進学校で、成績のよかった子同士が出会うのは、めずらしいことではなかった。

 

およそ七年ぶりに出会ったその人は、とても小さく見えた。

 

その頃、私は自分をもてあまし、もがき苦しんでいた。

いじめにあい、落ちこぼれの登校拒否児のレッテルを貼られ、赤点ばかりで出席日数も足らず、卒業も危ういと言われていた。

 

その人がどんなに美しく輝いていても、私の眼には、澱んで小さなものにしか見えないのは当然だったかもしれない。

 

親にも先生にも世間にも見放されたと気づいたとき、私はある決心をした。

 

復讐のために勉強をしてやる。

馬鹿にした奴らを見返してやる。

 

それだけが目的の、勉強だった。

私の心根が腐り始めたのは、いうまでもない。

 

それでも、その人は変わらず私の心の奥底にいた。

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クラスが違っても、教科は選択制で、その人とは時折同じ授業を受けた。

だが、こっちはグレかかって、友人はひとりもいないのだから、その人にだけ、話しかけようもない。

 

その人は、仲のよい女友達と、いつもおしゃべりに夢中だった。

ところがふと気づくと、その人は時折、私に視線を向けていることがある。

 

よくよく注意して見ていると、その人としゃべっている親友が、私を想っているらしかった。

人として出来損ないの私を想う親友のことを、かわいそう、と口元が動いているのだった。

 

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Nothing Like the Sun

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高校生活が終わり、その人がどんな人生を歩んだのか、私は何も知らない。

 

ところが、ある年齢を過ぎたあたりから、頻りにその人が、夢の中に現れるようになった。

なにか遠いまぼろしに会うように、無くしたものにすがるように、その人は私に語ろうとする。

 

これは、私の無惨な高校生活の、心残りなのかもしれない。

 

その人は、今どうしているだろうか。

私は老いぼれてしまったが、その人は、まだはつらつと、弾けた笑顔で暮らしているだろうか。

 

まさか、鬼籍に入ったがために、私の想いに気づいてくれたのだろうか。

 

私は、そんな縁起でもないことを、モヤモヤと空想し、終わりの日々を生きている。

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あとがき

薄々感じていたことではあるが、私が書くものの底流には、青春への悔恨がある。

このブログを書いているのも、過去の至らなかった自分へ向けて、ひとりごちているようなものだ。

 

今は、あまりに無知蒙昧だった自分に呆れ、少しであれ若い人の訓戒になれば、などど思っている。

 

最後に、前回のエッセイに続き、お読みくださった方に感謝します。