こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。
本日は、さても哀しき恋の歌、と題してお送りします。
それでは、1曲目。
アンダルシアに憧れて 真島昌利
- アーティスト: 真島昌利
- 出版社/メーカー: トライエム
- 発売日: 2002/02/06
- メディア: CD
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これは、元・ブルーハーツ(現・クロマニヨンズ)の真島昌利の曲。
ブルーハーツ以前に組んでいたバンド・THE BREAKERS 時代のオリジナル。
同バンドの頃の曲に、小山卓治に提供した「煙突のある街」がある。
フィルム・ノワールの映画を彷彿させるドラマティックな詞、エキゾチックな憂愁漂う曲とアレンジ、いずれも素晴らしい。
若い子は、ジャニーズの大御所となったアニキ分の歌だと思ってるかもしれないが、勘違いしちゃいけねえよ。
マーシーが、ジャニーズに書き下ろした曲なんかでは断じてねえのさ。
この曲は、悲恋というよりギャングの抗争で死んでゆく男の、女への激情を歌っている。
ブルーハーツには馴染まない、真島昌利独自の色を出した名曲。
推し測るに、真島のシングルがジャニーズと同じ頃に発売された、ということは、真島のソロアルバム制作現場から、この曲の存在がジャニーズ事務所にもれ聞こえ、真島側にさっそく競作オファーを出したという成り行きだったのではなかろうか?
これが、THE BREAKERS 時代のデモ音源。
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2016/05/27
- メディア: Blu-ray
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次の曲。
LIAR 中森明菜
- アーティスト: 中森明菜
- 出版社/メーカー: WM Japan
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: MP3 ダウンロード
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中森明菜は、80年代アイドルの枠を超えた卓越したシンガーだった。
80年代は、私にとっても苦闘の時代であり、中森明菜は私の戦友のような存在だった。
その彼女が、女として同じ歌い手の男と交際を始めた。
そして、彼女の歌は、私小説のように私生活と重なり合い、 彼女のプロデュースを手掛ける側も、意識的にその共犯関係を利用した。
やがて、この曲の歌詞にあるように「愛は悪い夢ね」と悟った彼女の銃口は、彼女自身に向けられる。
事件は、このシングル「LIAR 」発売から2ヶ月ほど経った日に起きた。
付き合っていた男の自宅で彼女は自殺を図るが、なんとか一命を取り留める。
そして半年の間、退院した彼女は姿を消す。
その年の暮、大晦日の紅白歌合戦の裏番組で、彼女は金屏風を背にし、事件後初めて姿を見せた。
そして、口にした言葉は、ファンや関係者、そして相手の男への謝罪だった。
報道等からみて、ここまでが比較的はっきりした客観的事実であろう。
そこで語られたことが、真実か否かは、当人しか知りようがない。
だが、その不自然さは、誰もがおかしく感じるだろうと思う。
なぜ、自殺未遂後の復帰会見に、金屏風が後ろにあるのか?
真実は、いつも「藪の中」だ。
だが、私は以上の事実からだけでも、相手の男を許さない。
自宅のマンションで、恋人を自殺に至らしめるような男を、私は信用しない。
会見で同席し、彼女との友人関係を強弁する醜い保身の答弁も、誠実さのカケラも伝わってはこない。
LIAR 。嘘つき。
そしてこの男は、この会見の1ヶ月前には、早くも真島昌利のカバーをリリースし、芸能活動を再開している。
次の曲。
この空を飛べたら 中島みゆき & 加藤登紀子
- アーティスト: 加藤登紀子
- 出版社/メーカー: Universal Music LLC
- 発売日: 2005/07/01
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これは中島みゆきの提供楽曲の中でも、指折りの名曲。
加藤登紀子とのコラボをやってたんだね。
昔、瀬戸内寂聴が、男と女はフィフティフィフティ、どちらが悪いということは無い、と言っていたが、こんな歌を聴くと、やはり女の情念というものは、男には無いもので、堕ちて行くと底が無いように感じる。
男なるものは、外で闘う本能だけだから、必ずしも帰る家を必要としない。
だが、女なるものは、そうではない。
互いを包み込み、寄り添い慕い合っていたい。
だから、それにつけ込んで、女性的なるものを道具のように利用する輩も出てくる。
そのような性というものの本来内包する本質が、あまたの悲喜劇を人の世に引き起こす。
弱きもの、汝の名は女なり。
シェークスピア「ハムレット」より。
脆く弱い者を、カネのために利用し、保身のために見捨てるようなマネは、男としては断然許せない行為である。
私などは、古い人間であるからそう思うのだが、己れ自身も他人事では無い。
ドイツの留学先で女を孕ませながら、立身出世のために「舞姫」エリスを捨てた森鷗外のように、いついかなる過ちを犯してしまうかわからない。
そういう意味では、男なるものも、また悲しき人の子なのである。
- 作者: 森鴎外
- 発売日: 2012/09/27
- メディア: Kindle版
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次の曲。
Silent Jealousy X JAPAN
- アーティスト: X
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct(Japan)Inc.
- 発売日: 2014/04/03
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YOSHIKI は、昔のルックスからもわかるように、女性的な内面を持った人だよね。
かと言って、メチャ男性の部分もあり、藝術家に多いタイプだ。
だから、自分を置き去りにしないでくれ、という悲痛な叫びを、ここまでストレートに書ける。
もっとも、その対象は女性とは限らず、自殺した父親であったり、亡くなったメンバーであったりする。
自分の周囲の人間が次々と不幸になってゆくことに、YOSHIKI は何度も衝動的な破滅願望に駆られた。
その苦悩の様は、映画「We are X 」を観た人は分かると思う。
自らの死を急ぐように、一触即発のボロボロの身体を粉にして活動を続ける姿は、晩年の太宰治を想起させて、痛ましい。
- 作者: 小松成美
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それでは、最後の曲。
難破船 中森明菜
- アーティスト: 中森明菜
- 出版社/メーカー: WM Japan
- 発売日: 2008/12/10
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中森明菜というシンガーは、憑依型のアーティストだと言われる。
だから、託された楽曲さながらに、人生をたどってしまう。
作家が自分の書いた作品によって、自身の未来を予言してしまうように。
これが、本物の藝術家が陥る宿命とも言えなくはない。
だが、今は過ぎたことはどうでもいい。
一ファンたる私には、輝いていたあの頃の笑顔が忘れられない。
今はただ、彼女の心の傷が癒え、幸せを手にして欲しいと願っている。