こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。
9月から日本ではラグビーワールドカップが開催され、大いに盛り上がりました。
日本代表チームは、目標としていたベスト8、決勝トーナメント進出を果たし、日本中に、ラグビーブームを巻き起こしました。
本日は、ラグビーオールドファンの方々、にわかファンの方々すべてに捧げる、ラグビー特集をお送りします。
それでは、1曲目。
ノーサイド 松任谷由実
ノーサイドの歌詞 | 松任谷由実 | ORICON NEWS
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ノーサイドの精神。
「ノーサイド」とは、ラグビー用語で、試合終了の瞬間を指す言葉。
試合が終われば、敵味方は関係なく、互いに同じ芝の上で死力を尽くした仲間同士なのだ。
サッカーでも試合後に、相手チームの選手とのユニフォームの交換をよく見かけるが、これこそスポーツの素晴らしさであり、存在意義でもあろう。
以前にも、このブログで書いたことだが、古来人間には敵対する者を打ち負かし、自己の生命を保全しようとする本能が備わっている。
これは、原始時代のヒトの生きる環境を考えれば、すぐに頷けることだろう。
大自然を相手に、食物を得て家族を養い、外敵から身を守らなければならない。
そして、原始的な集団社会が成立すると、そこに身分差別が生まれ、権力を握った長(おさ)は、他の集落を征服し、支配地を拡げたいという欲望に駆られる。
この征服欲、支配欲というものは限りが無く、人間の歴史とは、殺し合いすなわち戦争の歴史と言っても過言ではない。
だが、スポーツには、そういった人の子の邪悪な本能を、公正なルールのもとに、平和的、紳士的に昇華させ、人間の抱いている愛や平和への渇望を満たしてくれる効能がある。
そういう意味では、ワールドカップも五輪も、人間の邪悪な本能を平和裡に解消してくれるものとして、私は大いに期待しているのである。
80年代空前のラグビーブーム。
この松任谷由実の曲が発表された1984年頃というのは、ラグビーはサッカーよりも、はるかに高い人気を誇るスポーツだった。
特に大学ラグビーの人気が高く、関東の早稲田、明治、慶應、関西の同志社が毎年のように大学選手権で顔を合わせた。
そして、毎年正月早々に準決勝と決勝が、また大学優勝チームと社会人選手権優勝チームが激突する日本選手権も成人の日にNHK で毎年恒例の生中継がなされ、多くのスター選手を輩出した。
中でも、当時の同志社大学は、平尾誠二や大八木淳史を擁し、1982年から大学選手権3連覇を果たした。
そして、日本選手権を7連覇した、松尾雄治をキャプテンとする新日鉄釜石と闘い、健闘するも同志社はそのたびに厚い壁にはね返された。
その後、1986年に平尾誠二は、神戸製鋼に入社。
同社には、同志社のチームメートだった大八木淳史らも入社し、神戸製鋼ラグビー部は、新日鉄釜石と入れ替わるように、1988年から日本選手権7連覇を達成した。
大学、社会人時代と平尾誠二のキャプテンシーは突出しており、常にチームのリーダーとして、常勝チームを作り上げた。
松尾雄治(左)と平尾誠二(右)
次の曲。
インジュリィタイム 甲斐よしひろ
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「インジュアリータイム」とは、サッカーで言う、ロスタイム(アディショナルタイム)のこと。
私がかつてラグビーをよく観ていた頃は、この時間帯の劇的逆転という試合が多くあった。
現在は、「タイムキーパー制」の導入により、死語になりつつある。
この曲は、ラグビーそのものを歌ったものではないが、ラグビー好きならではのネーミングであろう。
対談。甲斐よしひろと森重隆。
80年代のラグビー人気の頃は、ユーミンだけでなく、甲斐よしひろも、大変なラグビーファンのひとりだった。
当時の甲斐は、ロックは格闘技だ、と盛んに言っていた。
甲斐バンドが、高校ラグビーの聖地・花園ラグビー場を初めてロックコンサートの会場に選んだという事実からも、甲斐のラグビー熱は伝わってくるだろう。
花園のライブは、開始早々から興奮のあまり観客がステージに押し寄せ、甲斐が観客の興奮を抑えるため、セットリストを変え、バラードの「安奈」を歌って、かろうじて大惨事を免れるという伝説のライブとなった。
1984年2月15日。
NHK-FM 甲斐よしひろのサウンドストリートで、現・日本ラグビー協会会長の森重隆氏との対談がオンエアされた。
森重隆氏は、当時の新日鉄釜石の松尾雄治の先輩に当たり、日本選手権4連覇後に引退し、主将兼任監督を松尾に譲った人物だ。
共に福岡育ち、生粋の博多っ子。
森さんの明かすエピソードは、とにかく面白い。
松尾雄治のプロポーズに至るエピソードなどは、本当にいい話でしかも笑える。
オールドファンには、たまらない内容で、なおかつ、初めて聴く方にも森さんの人柄がよく知れて、爆笑は必至。
以下に、その音源をアップしたので、この超レアな対談を、この機に是非、聴いてみて頂きたい。
この対談を聴いていると、森重隆氏と甲斐よしひろのラグビーへの熱い想いが伝わってくる。
最後の森氏のメッセージには、本当に心打たれるものがあるね。
新日鉄釜石時代の森重隆氏。
ラグビー人気凋落。冬の時代の到来。
さて、80年代には大いに盛り上がったラグビー人気だったが、その後、急速にトーンダウンしていく。
2011年に書かれた、以下のニューズウィーク日本版は、その理由の核心を突いている。
その人気衰退の原因となったのが、1987年に始まったラグビーワールドカップだった。
当時の日本は、世界と闘うとなると、そもそもレベルが違い過ぎた。
当時の日本の得意とする戦術は、巧みなパス回しとバックスの華麗なステップと俊足にあった。
だが、世界のトップチームは、日本の弱点であるフィジカル面ではおろか、バックスの力においても日本を寄せつけなかった。
その最たるものが、1995年の第3回大会における、ニュージーランド・オールブラックス戦の、17 対 145 という無残な大敗だった。
この1戦は、「ブルームフォンテーンの悲劇」と呼ばれることになり、多くのラグビーファンを失望させ、人気の凋落を決定的なものにした。
そんな状況下、日本ラグビー界のエースとして、平尾誠二が代表監督に就任する。
そして迎えた1999年の第4回大会。
結果は、4戦全敗だった。
平尾でも勝てないのか…。
ラグビーファンの落胆は、言うに及ばないほど大きかった。
日本国内で、大学選手権だの日本選手権だのと盛り上がっていたのは、いったい何だったのか?
所詮、世界では足もとにも及ばない児戯に等しいものだったのか?
それが、当時のラグビーファン共通の想いとなってしまった。
その頃、ラグビー人気に入れ替わるように、サッカーのプロ化が実現し、J・リーグが発足すると、空前のサッカーブームが到来する。
そしてラグビーとは対照的に、ワールドカップ初出場からベスト8進出へと、着実に結果を残していく。…
そんな暗黒の時代を経て、今年の日本代表チームの躍進は勝ち取られたものだった。
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2015年。第8回ラグビーワールドカップ。
平尾ジャパンの敗退から、16年が経っていた。
ラグビー日本代表は、開幕戦で、世界ランク2位の強豪・南アフリカを破り、新たな歴史を刻み始める。
ラグビー界に、五郎丸歩というスーパースターが誕生する。
そして、2019年。
ここからは、皆さんご存知のとおりだ。
快進撃を続ける中から、リーチ・マイケル、福岡堅樹、松島幸太朗、田村優、稲垣啓太、姫野和樹などを始めとするスター選手が数多く現れた。
これは、往年のラグビーファンには信じ難いようなムーブメントであった。
平尾誠二は、今から3年前、53歳という若さでこの世を去った。
今大会を目にすることなく、逝ってしまった。
しかし、今、その魂魄は、穏やかに、この地上を見つめていることだろう。
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ラグビーワールドカップ出場資格に思うこと。
久しぶりにラグビーを観たという方には、共通する想いがあると思う。
それは、何と言っても、日本代表の半数近くが日本国籍を持たない選手であるということだろう。
試合を実際に観ていて、これが日本代表チームなのか、と驚きや違和感を持ってしまうのは、まさに実感としてあるだろう。
現行規定では、日本に3年在住していれば、出場資格を得ることができる。
これがワールドカップ出場選手資格なのだ。
だが、よくよく鑑みれば、これは非常に高い国際性や文化的価値を持ったルールではないだろうか?
今回の日本代表には、韓国国籍の具智元選手がいた。
昨今、日本政府が韓国との政治的軋轢を抱えていることは周知のとおりである。
そんな中で、具選手が活躍して、両国から応援されていたということに、素晴らしい価値がある。
国籍を超えて、代表チームを作れるということは、そんな政治的問題を超えて、それぞれの国民同士の繋がりを作ることになる。
それによって、たとえ国家がスポーツを政治的に利用しようと意図したとしても、スポーツによって生まれた絆が、国境を超えて、不毛な争いを止めさせる契機となるかもしれない。
偏狭な愛国主義やナショナリズムを超え、国家間の政治的しがらみを超えて、スポーツが、その対立を無意味なものにしてしまう、そんな代表チームのあり方は素晴らしいと思うのだ。
最後の曲。
甲斐よしひろと森重隆の対談のラストに流れた。
ラグビーは、人生なり。
そして、この曲も、人生を大海原に喩えた。
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フェアプレーの精神。
今回のラグビーワールドカップを観ていて思ったのは、ラグビーというスポーツの持つフェアプレーの精神である。
ラグビーでは、ノックオンを始めとするペナルティは、プレーの最中に必然的に生まれるものが大半で、悪意や欺瞞から故意に行われる行為は、極めて少ない。
同じイングランドを発祥とするサッカーに比べても、そうである。
そして、試合終了とともに敵味方がなくなるノーサイドの精神は、すべてのスポーツのみならず、あらゆる競技において範とされるべきもので、この精神が人間の品格を高めるのはいうまでもない。
また、イングランドで生まれたラグビーとサッカーという二つの競技には、国々が背負った歴史の痛みが隠されている。
日本人にとっては同じイギリスなのに、なぜイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの4チームが出場するのか?
こういうところも、実に人間的であり、奥が深いのである。
にわかファンを自称する方々は、こんな切り口からも、ラグビーというスポーツを楽しんで頂きたいと思うのである。