MIDNIGHT HERO

Deracine's blog. Music, movies, reading and daily shit.

ロバート・デ・ニーロ主演、マーティン・スコセッシ監督。ベトナム帰還兵の心の闇を描いた名作「タクシードライバー」。

Movie Posters

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

本日は、カンヌ映画祭パルムドールをはじめ、数々の映画賞に輝いた、ロバート・デ・ニーロ「タクシードライバー」をご紹介します。

我が青春を彷彿させる名作映画。

19 の時、私は、この映画を場末の名画座で観た。

 

映画が始まるとともに、濛濛たる煙幕がスクリーンいっぱいに拡がる。

妖しく伴奏する音楽が、心臓の鼓動のように鳴り響く。

夜の闇から、不気味な気配をともない、薄汚れたイエローキャブが姿を現す。

 

まさに、この映画にふさわしいファースト・シーンだ。

 

ロバート・デ・ニーロ演じる、タクシードライバーの抱える心の闇。

孤独。喪失感。苛立ち。焦燥。

それらすべてが、当時の私自身のものだった。

 

イエローキャブ  甲斐よしひろ

イエロー・キャブ

イエロー・キャブ

  • 甲斐よしひろ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ニューヨークの街を走るタクシーは、イエローキャブが多数を占める。

言葉の元は、会社名であるらしい。

 

創始者が、タクシーは黄色が一番目立つ、という理由で命名されたものだという。

甲斐の曲、あとでかけるモッズの曲、どちらも、この映画があって作られたに違いない。

 

公開は、1976年。

アカデミー賞作品賞、カンヌ映画祭パルムドールほか、数々の映画賞に輝いた。

ロバート・デ・ニーロは、一躍、アメリカンニューシネマのヒーローとなった。

 

この映画以降、監督のマーチン・スコセッシとはタッグを組み、多くの作品で主役を演じた。

また、当時13歳のジョディ・フォスターが街娼役で出演しており、話題となった。

タクシードライバー (字幕版)

タクシードライバー (字幕版)

  • ロバート・デ・ニーロ
Amazon

「タクシードライバー」 トレイラー

ベトナム帰還兵が主人公。

主人公、トラヴィスは、ベトナム戦争の帰還兵だ。

 

彼がニューヨークの街で初めにしたことは、職を求めることだった。

ベトナムで彼がどんな体験をしたか、一切彼は語ろうとしない。

 

生死の境を彷徨ったかもしれないし、多くのベトコンを殺害したかもしれない。

だが、彼の心模様は、彼の発する言葉や表情が十分に示唆している。

 

トラヴィスは、夜勤のタクシードライバーとして、ニューヨークの街を流す。

週6日、12時間以上、働いている。

 

それでも不眠症は治らず、眠れない。

戦場の暮らし振りを想像してみれば、わかる。

 

いつ、ベトコンの襲撃があるやもしれない。

常に生死の狭間に日常がある。

 

彼が軍の中枢部で、デスクワークをしていたとは考えにくい。

敵味方の死骸を見ぬ日とておぼつかない、前線にいたはずだろう。

ぐっすり眠れるはずがない。

 

人を平気で殺すことが、兵の役割。

人間の感情など、棄ててしまって当たり前だ。

 

殺すか、殺されるか。

 

秋葉原の通り魔を、障害者施設の殺人鬼を、世間は指弾するけれども、戦争では人殺しが英雄になるために必要なことだ。

 

そんな経験をして国に戻ってきて、さあ、これからは人並みの暮らしが待っている、と言われても……。

できるわけが無いだろう?

 

今では、PTSD という便利な言葉があるが、当時そんな概念はまだまだ認知されていなかった。

だが、戦争に送り込まれた若者の、心の荒廃を表現するに、この作品はまさに画期だった。

タクシードライバー (字幕版)

タクシードライバー (字幕版)

  • Martin Scorsese
  • ドラマ
  • ¥1100

「タクシー・ドライバー」オリジナル・サウンドトラック

トラヴィスの日常。

ニューヨークの夜の街。

そこには、犯罪、暴力、売春、麻薬取引、人種差別などの暗黒が渦巻いている。

 

トラヴィスは、誰でも車に乗せ、客の言う場所ならどこへでも行く。

朝方、タクシーの車庫に帰ったあとは、客の座席を掃除する。

そこには、血が落ちていることも。

 

非番のときは、ポルノ映画を観に行く。

映画館では、売店の女性を誘おうとして、大きな声をあげられる。

 

狭いアパートでは、よく日記を書いている。

そこには、汚辱された彼の心の、悲痛な叫びが綴られる。

 

そんなトラヴィスの心に、初めて恋愛感情が目を覚ます。

大統領候補の選挙事務所で働く女性、べツィに恋をし、映画に誘う。

 

だが、トラヴィスは、普通の恋愛をする感性さえ失っている。

彼女をポルノ映画に誘ってしまい、当然のごとく、彼女は怒り狂人扱いを受ける。

 

精神に、ひどい傷を負っていると、普通の感覚では当たり前のことが、どうしてもできないのだ。

 

ヘイ トラヴィス  THE MODS 

HEY!! TRAVIS

HEY!! TRAVIS

  • THE MODS
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

トラヴィスの正義とは?

彼女に捨てられたトラヴィスは、ますます孤独の淵にはまっていく。

しかし、ある時から急激に、自己変革を志すようになる。

 

半裸での、狭いアパートでの自己鍛錬…。

拳銃を買い込んでの射撃訓練…。

命を奪うための訓練…。

それらは、ベトナムで身につけた、彼の唯一の財産だった。

 

では、いったい何のためか?

トラヴィスにとって、何が正義で、何が悪なのか?

 

大統領候補暗殺と、少女売春で生活するチンピラの射殺。

そこには、世間の常識に基づいた善悪の観念は存在しない。

トラヴィスにとっての悪なるものが、その2つの情熱に集約されていった。

 

たまたま、大統領候補の暗殺は失敗し、少女売春で生きているチンピラの射殺には成功した。

結果的に、彼は少女を救った英雄に祭り上げられた。

 

だが、トラヴィスには、その違いが分かろう筈が無い。

彼は、実行可能な挑戦を試みただけだ。

 

一般世間における毀誉褒貶と、彼の行為はことごとく噛み合わない。

それが、見かけ上、戦争のもたらす悪への、彼なりの精いっぱいの反抗であったとしても。

 

映画音楽の巨匠、バーナード・ハーマンのサウンドトラック。

これを聴くと、すぐに若い頃に還る。

映画にふさわしい名曲。

 

Theme from Taxi Driver      Bernard Herrmann 

戦争は憎むべし。

だが、戦争の本質を知らずに、国民を戦争に駆り立てる輩はもっと罪が深い。

 

兵隊さん、ありがとう。

軍隊は必要です。

 

これを、安倍晋三の言葉で言えば、「安全保障政策」「自衛隊合憲」「憲法改正」。

 

そういう政治の常識に騙され、当たり前だと思っている日本人とはなんぞや?

80年ほど前の、戦争の惨禍をもう忘れたか?

 

言っておくが、私は共産党が嫌いであり、自民党も嫌いである。

そもそも、政治家という権力を欲しがる生き物が大嫌いだ。

ただ、自由と平和を愛する者だ。

 

だが、このまま放置しておけば、確実に戦争の足音が聞こえて来る。

だから、立ち上がるときだ。

軍備を縮小し、原発を潰す政策を支持するべきだ。

私は、そう思う。

 

この曲は、映画の劇中歌。

Late for the Sky        Jackson  Browne

Late For the Sky

Late For the Sky

  • JACKSON BROWNE
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

映画のラストシーン。

凄まじいバイオレンス・シーンが演じられた後。

トラヴィスに、穏やかな日常が訪れる。

それは、束の間の出来事に過ぎないかもしれない。

 

だが、トラヴィスが少しの温もりを感じた、心温まるシーンだ。

そこに、バーナード・ハーマンの哀愁漂う音楽が重なる。

 

音楽とともに、イエローキャブは走り去る。

 

ヴィンテージ映画ポスタータクシードライバー日本のキャンバスアートポスターとウォールアート写真プリントモダンファミリーベッドルームインテリアポスター (60X90Cm)-24x36インチ Frame-style1

J・POP 80年代の名曲選。吉田拓郎編。押しつぶされる陰の世界。「いじめ」という名の闇の祭典。

80年代音楽ノート

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

 

日本の音楽シーンと、カウンターカルチャーの歴史を振り返る特集。

前回は、吉田拓郎の、よしだたくろう時代の名曲、70年代という過渡期の若者文化を取り上げた。

今回は、その後編。

80年代の根底を成した、若者文化の功罪を問う。

 

1曲目。

この指とまれ  吉田拓郎

この指とまれ

この指とまれ

  • 吉田拓郎
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

遅れてきた、ネアカの時代。

いったんは、フォーライフレコードの社長として、一線を引いたかにみえた拓郎。

だが、1979年の篠島アイランドコンサートで、その健在ぶりを示した。

 

しかし、時代は変わる。

 

前回取り上げた「ネクラ」抹殺ファシズムは、一気に時代の空気感をさらってしまった。

 

70年代、シンガーとして60年代のいびつさを歌ったよしだたくろうは、そのいびつさにしっぺ返しを喰らう。

 

80年代。

明るさや陽気さばかりがもてはやされる、そんな時代がやってきた。

 

生きることに、陽気さも暗さもあるのは当然で、拓郎はそれをストレートに歌にしてきた。

しかし、そんな男の歌が、敬遠され始めた。

 

拓郎は、いち早くそんな時代から、いちぬけたを宣言する。

「この指とまれ」は、そうした時代に拓郎が書いた曲だ。

 

だが、拓郎の歌声は、時代の逆風に途切れがちだった。

「LIVE ‘73」の頃のフィット感は、薄れつつあった。

 

さりとて、拓郎はそこに止まってはいなかった。

時代を超越する名曲が、誕生した。

唇をかみしめて  吉田拓郎

唇をかみしめて

唇をかみしめて

  • 吉田拓郎
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

これは、武田鉄矢 主演、映画「刑事物語」の劇中歌。

拓郎自身が作詞も手がけた。

 

2006年のつま恋ライブでも、指折りのパフォーマンスを見せたので、これを初めて聴いた人は、自身の不明を恥じただろう。

 

武田鉄矢演じる不器用な刑事、片山という男をモチーフにしたことが、時代を超えて胸に響く名曲を、この時期の拓郎にもたらした。

 

こういう曲は、時代性に左右されない。

永遠不滅、と言って良い。

唇をかみしめて

唇をかみしめて

  • FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT,INC.
Amazon

山田太一さんのエッセイ「明るい話」。

前回に続き、私が語っている時代論。

それは、ほとんど私の主観によるものだが、あながち全部が的外れではないと思っている。

 

80年代、ドラマ「ふぞろいの林檎たち」で一世を風靡した脚本家の山田太一さん。

山田さんは、そのエッセイで、こう述べておられる。

はっきり暗い話が嫌われるようになったのは、1980年代のはじめあたりではないだろうか。

60年代あたりまでは、ちょっと暗いくらいの男の方がもてたのである。

髪をかき上げて人生について、政治についてなにか考えがあるような顔をした方が格好よかった。

悩みのない、明るい青年などという者は、愚かしい感じがあった。

70年代に明暗が入れ替わって行く。

(中略)

そして「お笑いブーム」がやって来る。

「笑っていいとも」ということになる。

それは若い人たちの意識をどれだけ解放したか知れない。

面白いという男がもてるようになった。

しかし、それは一方で、暗い男の魅力など見当もつかなくなるという美意識も生んだ。

「マジな議論」は居場所を失くし、弱さや悩みは隠さないといじめられてしまう。

明るさ面白さは強迫となって、とりわけ若い人たちの日常を支配して行く。

 

山田太一「明るい話」より。

エッセイ集「誰かへの手紙のように」収録。

まさにこの指摘は、同時代に青春を生きた私にとって切実なもので、まがう事なき現実だった。

このエッセイは、あまりに私の思いを代弁してくれているので、これを伝えるには全部を引用しなければならない。

そのために、あえてこの後は、割愛している。

誰かへの手紙のように

「いじめ」という非日常。

しかるに、当たり前の話で、人間いつもいつも、明るいことばかりでは生きられない。

だから、その現実とのギャップが大きくなり、ついには「キレる」ことになってしまう。

 

いじめが陰湿になり、非日常性を帯びたのは、まさにこの時代意識のためではないか。

 

時代の鏡である子供達は、明るく仲良しのクラスメイトを演じながら、裏側にあるサディスティックで陰湿な負の感情を、日常から排除する。

 

いじめは、陰の自分らしさを言祝ぐ祭と化し、明るさのベールで覆うことで、より儀式的な意味合いを持つ。

 

そして、今も。

「いじめ」の儀式は途切れることがない。

 

閉塞した社会に、明るくよい子を演じる子供達にとって、これほど本当の自分を表現し、カタルシスを感じる祭典は、日常生活には存在しないからだ。

 

娘がいじめをしていました (コミックエッセイ)

娘がいじめをしていました (コミックエッセイ)

忘れられる陰の存在。

事は、いじめだけではない。

科学万能の時代が長く続き、光の裏側にある陰影が忘れ去られつつあった。

 

その昔から日本人は、見えないものや、隠れているものに、繊細な感情を抱いてきた。

未知なるものへの畏れや敬虔、憧憬などが、イマジネーションをかき立て、ひとの心を豊かにしてきた。

 

谷崎潤一郎に「陰翳礼讃」という随筆があるのをご存知だろうか。

谷崎でなくとも、祖先は陰影への配慮を怠らなかった。

 

四季という自然の移ろいが、揺れ動く明暗のなかに曖昧な世界をもたらし、豊かな感受性を育んだ。

 

だが、この真夏、今はどこへ行っても、摂氏28度以下の密室に人間は生きている。

地上は、人間の小細工により増幅する温暖化をあざ笑い、したり顔で地獄の釜のような熱暑をもたらす。

 

Woman Is The Nigger Of The World      John Lennon 

Woman Is the Nigger of the World

Woman Is the Nigger of the World

  • ジョン・レノン
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この歌は、70年代の曲だが、このメッセージ一色の詞が懐かしく、聴いてもらった。

こんなロックが、今どきの音楽に、どれだけあるだろうか?

 

80年代の初め頃から、拓郎は、こんな感じの壮大なアレンジ、ビッグバンドへの志向を強めていく。

80年代のJ・POPシーン。

最近、音楽評論家の田家秀樹が「80年代ノート」という本を出した。

それ以前には「70年代ノート」も書いている。

大まかな粗筋は、田家秀樹の本に譲る。

 

私にとって印象深いのは、とにかくサザンが絶好調で、あとは大瀧詠一、オフコース、REBECCA、甲斐バンド。

 

だが、何よりも衝撃だったのは、尾崎豊の登場だった。

私は、伝説の大阪球場ライブを生で観た。

 

80年代、尾崎は女性ファンのものだった。

彼の存在が社会現象になり、あちこちにストリートで歌う若者達が登場するのは、彼の死後のことだ。

彼も、時代に異物として存在したシンガーだった。

このブログ推しの女性シンガー、稲葉喜美子さんも、その頃、メジャーデビューした。

 

最近、稲葉さんご本人が、Xで、たびたび私のツイートにいいねしてくださるので、個人的にはすごく嬉しく思っている。

 

稲葉喜美子さんには、素晴らしい曲がたくさんあるので、是非聴いてもらいたい。

なかでもイチオシの曲。

サンダル予報  稲葉喜美子

 

サンダル放る 空高く
明日 天気に しておくれ
あの娘の屋根で 雨坊主
踊り 小躍り せぬように…

つつけば泣くよな娘だから
叩けば壊れて堕ちるから

あの娘の窓に 産毛色
生まれたてお日さま 一人前
届けてくれる そのためなら
何度でも サンダル 放るから

『晴れ』と出るまで
何度でも
しまいにゃ 足まで 放るから・・・

サンダル放る 空高く
明日 天気に 明日 天気に
明日 天気にしておくれ…

 

詞・曲 稲葉喜美子

ほんとにいい歌。

上の、サードアルバムに入っている。

当時、お金のない学生だった私は、レコードをレンタルし、カセットテープで聴いていた。

(最初に、ファーストアルバムに入っていると間違えて書いていたら、ご本人からXでご指摘頂きました。)

 

そこで、思うにはー。

今、デジタル音源で出ているベストアルバムに、この曲が入っていない。

是非とも、版権持ち主のレコード会社さんは、CDやサブスクで聴けるようにしてほしい。

 

このブログへのコメント、レコード会社への直談判で、皆さんよろしく。

 

こんな才能が、気づかれない時代だった。

惜しいことだ。

そして、90年代がやって来ようとする頃。

あの、X (改名後XJAPAN)が登場した。

 

そして、90年代初め。

 

尾崎豊が謎の死を遂げる。

そのカリスマ性に魅了された若者達の存在が、世の中にクローズアップされる。

 

その夭逝により、尾崎豊は、その名をすべての世代に知られることになった。

潮目は、大きく変わった。

 

多くの若者の路上ライブを聴きながら、時代は変わる、と思った。

 

だが、どんなに時代が変わろうと、よい歌は残る。

当たり前が当たり前でなかった時代も、いつか終わる。

 

そんな希望を胸に、最後の曲。

アジアの片隅で  吉田拓郎

アジアの片隅で

アジアの片隅で

  • 吉田拓郎
  • J-Pop
  •  
  • provided courtesy of iTunes

80年代、吉田拓郎と岡本おさみコンビが復活し、この名曲を生んだ。

アルバムタイトルとなったレコード音源は、唯一、ライブだった。

 

この詞にある多くのいざこざは、昔も、今も、これからも、延々と続くであろう。

これは、人間というタチの悪い生き物の「業」とでも言うほかはない。

 

それゆえに、闇の世界、影の世界をも、キッチリと見据え続ける眼が大事なのだ。

 

それでは、本日はこれで終わりです。

おやすみなさい。

 

アジアの片隅で(紙ジャケット仕様)

J.POP 70年代の名曲選。よしだたくろう編。「ネクラ」の文化論。

元気です。

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

 

日本の音楽シーンと、カウンターカルチャーの歴史を振り返る特集第1弾。

いわば、私こと、デラシネの独断と偏見による、J・POP の歴史。

 

では、1曲目。

1972年7月リリース。アルバム「元気です」収録。

祭りのあと  よしだたくろう

祭りのあと

祭りのあと

  • よしだたくろう
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

祭りは終わった。

詞は「落陽」「襟裳岬」など、拓郎とのタッグで数々の名曲を手がけた岡本おさみ

こんな歌詞がある。

日々を慰安が吹き荒れて 帰ってゆける場所がない

日々を慰安が吹き抜けて 死んでしまうに早すぎる

この詞の中の「日々を慰安が」という言葉は、吉野弘の詩を、岡本おさみが借りてきたものだと言う。

 

私は、この事実を、山田太一さんのエッセイをキッカケに、最近ようやく知った。

エッセイの中で、山田太一さんは、吉野弘の「日々を慰安が」を引用していた。

 

岡本おさみの詞と吉野弘の詩にある言葉が、まったく同じであるからには、無関係なわけがない。

そう思い、ググったのだ。

 

この言葉を、何十年と心に抱いて生きていた。

それが、山田太一さんが好きな詩人、吉野弘のものだったとは…。

 

何の脈絡もなく、好きだった言葉を、私の大好きな文筆家二人が、異なる表現媒体で引用していたのだ。

結局、好きなもの同士は引き寄せ合う、そういうことなのだろう。

60年代は、政治の季節。

若者たちは、燃えていた。

あるいは学生運動へ。

あるいは、アングラフォーク、アングラ演劇へと走った。

 

どれも、国家権力と闘うことを潔しとしていた。

世の中に対しては気難しく、真面目に、政治や社会に注文することが、正義と思われた。

人生の本質に対しても、同じく正面から向かい合い、対峙している必要があった。

 

この歌は、そういう時代への訣別を、象徴していた。

 

「革命」を夢見て闘う時代は、終わった。

すべての祭りは、終わったのだ。

祭りのあとの寂しさは、今宵の酒や、女で紛らわすしかなくなった。

 

政治的混沌は単純化され、国は経済発展、金まみれになることを奨励した。

 

拓郎や陽水の登場により、個人の時代がやってきた。

だが、その本質を理解した人間は、ほとんどいなかった。

日本人の同調圧力体質は、次なる時代を用意していた。

 

元気です。

元気です。

  • Sony Music Direct (Japan) Inc.
Amazon

 

1973年6月リリース。アルバム「お伽草子」収録。

ビートルズが教えてくれた  よしだたくろう

ビートルズが教えてくれた

ビートルズが教えてくれた

  • よしだたくろう
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

これも、同コンビの名曲。

こんな歌詞がある。

ウジウジと吹き溜りのスナックで

腕を組みながら

考え深そうな顔をするのも楽にできる

日陰ばかりを好んでいては

いじけてしまうんだぜ

もっと陽気であっていいんじゃないか

もっと陽気でもいいんじゃないか

これは、1970代以前の若者たちに向かって歌われた。

左翼へ走る、全体主義志向の若者たちへ、一石を投じた、メッセージソングだった。

 

反時代的であること。

その価値を、知っているから歌えた。

 

1972年。

「結婚しようよ」をリリースしたこと。

曲が大ヒットしたこと。

それが商業主義に身を売ったとして、コンサート会場では「帰れ」「帰れ」の大コールを浴びた。

 

「帰れ」と叫ぶ客が、正しいと思っている頑なな価値観。

それが唯一、真っ当な価値であるのか?

たくろうは、きっと舌を出していたに違いなかろう。

 

おまえら、ひとりで戦えないのかよ。

 

70年代は、拓郎の時代だった。

そのニュートラルで、自由な生き方や主張が、熱い共感を呼んだ。

「フォーライフ」レコード設立も、つま恋コンサートも、その延長線上にあった。

コンサート イン つま恋 1975 [DVD]

コンサート イン つま恋 1975 [DVD]

 

80年代。「ネクラ」の肖像。

そして、80年代を迎えた。

タモリの「笑っていいとも」が放送開始。

「ネクラ」「ネアカ」という言葉が大流行していた。

 

タモリは、絶大な人気を誇ったさだまさしや小田和正を引き合いに出し、ネクラなヤツと断定。

盛んにおちょくって、この言葉を拡散させた功労者?となった。

 

タモリはその実、「ネクラ」という表現をむしろ肯定的に使っていたのだ。

しかし、その言葉に飛びついた大衆の受け止め方は違っていた。

 

「ネクラ」は陽気で空気の読めるノリのいい奴、「ネアカ」は陰気でマジメ、冗談の通じない奴、と表面的な人格分類として受け止められた。

 

その「ネクラ」抹殺ファシズムは、80年代の世相を象徴する流行語として、バブル絶頂を迎えた世界一の経済大国日本に跋扈していった。

タモリと筑紫哲也の対談。「ネクラ」の意味に言及した。

伽草子

80年代。「ネアカ」の肖像。

そして、この歌詞をもう一度、掲げる。

ウジウジと吹き溜りのスナックで

腕を組みながら

考え深そうな顔をするのも楽にできる

日陰ばかりを好んでいては

いじけてしまうんだぜ

もっと陽気であっていいんじゃないか

もっと陽気でもいいんじゃないか

 

80年代に、この曲を聴いた人間には、奇妙に思えた。

 

そうじゃない?

当たり前じゃない?

クラいんじゃ、盛り上がれないよ。

 

この曲は、図らずも、80年代の若者たちの登場を、ある意味で、予言してしまったのだ。

 

彼らに一様に言えること。

考えること、真剣に生きることをバカにする。

ノリが悪いこと、気まずいことを極端に嫌う。

 

岡本おさみは、60年代の風潮に対するアンチテーゼとして、先の詞を書いたはずだ。

 

ところが、今度は70年代以前とは真逆の、軽くて陽気な人間の価値ばかりが賞揚されることになってしまった。

 

これは、時代の皮肉としか言いようがない。

 

その吉田拓郎は、80年代、どうだったか?

それはまた、次に語ろう。

旅に唄あり 復刻新版

 

最後の曲。

皆さま、お暑うございます。

暑中見舞い  よしだたくろう

暑中見舞い

暑中見舞い

  • よしだたくろう
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

それでは、本日はこれで終わりです。

おやすみなさい。

 

吉田拓郎のすべて

ロックの原点。オールディーズの名曲選。

Stratocaster |explore|

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

本日は、昨年逝ってしまった鮎川誠、追悼の意味合いも込めて、オールディーズの名曲特集をお送りします。

1曲目。

The  House of Rising Sun  The Animals

The House of the Rising Sun

The House of the Rising Sun

  • アニマルズ
  • ロック
  •  
  • provided courtesy of iTunes
BEST OF THE ANIMALS

BEST OF THE ANIMALS

Amazon

邦題の「朝日の当たる家」と言えば、聞いたことがある方も多いだろう。

 

これは、鮎川誠が選んだ「60年代シングルベスト100」で、2位にランクされた曲。

「60‘ ロック自伝」にランキングが掲載されている。

 

全編、鮎川の久留米弁で書かれている異色のロック教本。

電子書籍でも買えるようになったので、是非読んで欲しい1冊だ。

60sロック自伝

60sロック自伝

  • 鮎川誠
  • 音楽
  • ¥2,000
60sロック自伝

60sロック自伝

  • 作者:鮎川 誠
  • シーディージャーナル
Amazon

オールディーズって何、という方もいるかと思う。

これは簡単に言えば、主に60年代にヒットして、スタンダードとなったロックやポップスの総称と言ったらよいだろうか。

 

ビートルズも、ライブ活動を止めた頃に、それまでのシングル曲を集めた「オールディーズ」というタイトルのアルバムを出している。

 

だが、これはちょっと意味合いが違うようで、ひとつのバンドの曲だけで、普通「オールディーズ」とは呼ばない。

 

このタイトルを付けたビートルズは、もう自分たちの曲が、すべてスタンダードナンバーになるという、自信の表れと言っても良いのではないか。

まさに別格のバンドということだ。

オールディーズ [Analog]

オールディーズ [Analog]

このアルバムは、1966年12月6日に、イギリスだけで発売された。

ビートルズの、クリスマス・プレゼントと言われている。

 

そんなこんなで、CD にはなっていないレアな1枚。

このLP レコードの、A面1曲目に収録。

She  Loves  You         The Beatles 

She Loves You

She Loves You

  • ビートルズ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この曲は、さっき紹介した鮎川誠の「60年代シングルベスト100」では、7位に入っている。

鮎川は、ビートルズをリアルタイムで聴いてるんで、彼らの登場はまさに衝撃だった。

シングルベスト100には、10曲を選んでいる。

朝ドラ「ちゅらさん」再放送に、鮎川誠が出演中。

2024年4月から朝ドラ「ちゅらさん」が再放送されている。

ヒロイン・国仲涼子の弟役が、山田孝之。

 

沖縄のライブハウスに通ううちに、ロックに目覚め、そのライブハウスのオーナーが、鮎川誠の役である。

鮎川誠の、ギンギンのアドリブ演奏なんかが観られて、たまらんよ。

 

しかも、この「ちゅらさん」は朝ドラ史上に残る名作。

 

放送は、平日の12時半から。

5月27日の第40話には、鮎川誠が登場した。

今後も要チェックしてみて。

 

また、NHKプラスでも見逃し配信中。

第40話以降くらいまで視聴可能だ。

 

全話を一気に観たい方は、NHKオンデマンドでどうぞ。

Amazon  NHKオンデマンド ちゅらさん

第 17回 やまとの誘惑

話はそれるけど、最近「ちゅらさん」が始まったんで、全話をBlu-ray Discで観た。

そしたら、いろいろな発見があった。

 

2000年の放送なので、その頃の若手がたくさん出てるんだ。

特にビックリは、ヒロインの弟・古波蔵恵達の結婚相手・中町祥子役の、山口あゆみさん。

 

なんと、クドカン脚本の「池袋ウエストパーク」に出てた。

しかも、マサ(佐藤隆太)を恐喝する不良女子高生のメンバーで。

 

あの清純な看護士の中町祥子ちゃんが、メーキャップでこんなに変わるのかと驚いた。

I.W.G.P には、ホントに驚くようなキャストが回ごとに登場して、宮藤官九郎と同世代としては、感涙ものだよ。

これはノリがいいよ。

Bus Stop         Hollies

この曲は、昨年、野島伸司脚本のドラマ「何曜日に生まれたの」の主題歌に使われたので、知っている人も多いだろう。

 

ビートルズが巻き起こしたイングリッシュ・インヴェイション。

 

イギリスのカウンターカルチャー(既成の文化に若者が反逆して起こったムーブメント。)は、ロックンロールの発祥の地、アメリカを丸ごと呑み込んでしまった。

 

ホリーズは、その最中にデビューし、1966年、この曲で大ブレイクを果たした。

さっきのアニマルズも、同じくイングリッシュ・インヴェイションの代表格のバンドだ。

BUS STOP

BUS STOP

  • ホリーズ
  • ロック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

アメリカのフォーク系のグループ、ママス&パパスが1965年にリリースした大ヒット曲。

California Dreamin'       THE MAMAS & PAPAS 

California Dreamin'

California Dreamin'

  • ママス&パパス
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
California Dreamin'

California Dreamin'

  • Revolver Records
Amazon

サブスク時代。Apple Music の優れた点。

今は、とにかくサブスク。

 

オールディーズの名曲も、月額または年額払いで、あらゆるジャンルの、たいていの曲は聞けてしまう。

私が若い頃には、ラジオのチャート番組をカセットテープに録音して聴くのが当たり前だった。

 

しかし、ラジオ番組には、それなりのメリットも多かった。

それは、今も不変だろう。

 

リクエストしたリスナーは、抽選でレアなグッズやチケットをもらえる。

 

主婦或いは主夫の方は、家事をしながらラジオをかけ流しして、今も昔も聴いている。

床屋さん、千円バーバーでもラジオは流れている。

 

ラジオは耳だけあればいいメディアだから、それなりのニーズはこれからもあるだろう。

私は現在、Apple music に加入している。

良い点は、アプリの洗練度と使いやすさだろう。

 

しかし、他の音楽サブスク・アプリもどんどん進化している。

私はとにかくApple製品が好きなので、パソコンの iTunes を使い、Apple music  には無いCD を取り込んで、サブスクと所有音源の両方を、Apple  music で楽しんでいる。

 

所有音源を取り込める機能は、他のサブスクアプリでもあるだろうから、試してみてもいい。

私のチョイスは、Apple ブランドへの信頼という点に尽きる。

 

最近は、アーティストの全曲配信がどんどん進み、トップアーティストの新曲もサブスクで聴くことができるようになった。

Only You         The Platters 

Only You (And You Alone)

Only You (And You Alone)

  • プラターズ
  • ヴォーカル
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Only You

Only You

  • Sound and Vision
Amazon

この曲は、福岡出身の50代以上の方なら、昔のTVのCMで聴いたことがあるはずだ。

 

「靴のナラザキ」。

この店は、福岡市中央区天神の新天町商店街で、今も営業している。

これが流れていたのは、私が小学生から中学生くらいのとき。

つまり、昭和50年代頃まで。

いったい、この頃は、著作権って無かったのだろうか?

 

ローカルなCM繋がりで言えば、福岡では当時からいまだに半世紀にわたり流れ続けているのがある。

 

東雲堂の「にわかせんぺい」。

たまには、ケンカで負けてこい〜、と歌える人は立派な福岡県民です。

もうひとつ、プラターズと言えば、この映画を思い出す。

「アメリカン・グラフィティ」

この映画は、昭和の時代に、吹替え版で何回も再放送された。

 

制作は、「ゴッド・ファーザー」「地獄の黙示録」のフランシス・F・コッポラ。

脚本は、「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカス。

このタッグで、面白くない訳がないという映画。

 

カリフォルニア州のある地方都市。

東部の大学に合格した高校生が、故郷の町を旅立つ前夜。

この一日にも満たない時間に、若者たちの青春模様が描かれる。

劇中では、全編に60年代のオールディーズがラジオから流れる。

曲を紹介するのは、実在した伝説のD J、ウルフマン・ジャック。

 

日本語吹替えは、日本のディスクジョッキーの先駆者、小林克也が担当した。

だから、吹替えとは思えないくらい、しゃべりがリアルだった。

 

若者たちは、溜まり場のドライブインで、流している車の中で、このラジオ番組を聴いている。

 

そこには、脚本を書いたジョージ・ルーカスの青春が、目一杯、詰まっている。

卒業、デート、初恋、ケンカ、ダンスパーティ、別れ話、カーチェイス…。

ティーンネイジャーの周りで起きる、苦くも甘ずっぱい出来事が満載なのだ。

 

まるで、チェッカーズのヒット曲の歌詞そのまま。

 

それを観ていた中学生の頃の私は、これが青春というものなんだと、無邪気に信じていた。

10代の終わりには、本当に、この映画のような青春を生きようとしていた。

アメリカン・グラフィティ (字幕版)

アメリカン・グラフィティ (字幕版)

  • リチャード・ドライファス
Amazon

アメリカン・グラフィティ Vol.1

アメリカン・グラフィティ Vol.1

 

Raindrops Keep Fallin' on My Head       B・J・Thomas

Raindrops Keep Fallin' On My Head

Raindrops Keep Fallin' On My Head

  • B.J.トーマス
  • カントリー
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

邦題は「雨に濡れても」。

これも映画「明日に向かって撃て」のサウンドトラック。

 

アメリカン・ニュー・シネマの名作で、主演はポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス。

 

学生時代、甲斐よしひろのサウンドストリート(注1)のサントラ特集があって、これが神回だった。

その頃、「フラッシュ・ダンス」という映画が流行って、これに反応して甲斐が映画と青春を語った。

 

そのとき流れた1曲がこれだった。

この回はみんなに聴いて欲しいので、いつかYouTubeにアップしようかとも思っている。

(注1)

80年代、NHK FM 平日22時放送のラジオ番組。

坂本龍一、山下達郎、渋谷陽一、佐野元春、甲斐よしひろが曜日ごとにパーソナリティを務め、当時の音楽ファンに熱烈な支持を受けた。

雨にぬれても

雨にぬれても

  • Shinko Music Records
Amazon

My Generation      The Who 

マイ・ジェネレーション

マイ・ジェネレーション

  • ザ・フー
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Don't Trust Over Thirty (30代以上を信じるな)。

I hope die before I get old (歳取る前に死んでやる)。

 

フーのピーター・タウンゼントは、そう歌った。

大人社会へのアンチ・テーゼとしてのロックを、カウンター・カルチャーの神髄に祭り上げたのが、このバンドだ。

 

この動画を見てのとおり、若き日のYOSHIKI や甲斐よしひろが、ドラムやギターを破壊するのは、ここらへんがルーツなのだ。

 

これがロックの原点だよなぁ、裕也さん。

あんたのやったことは、ある意味、正解だったよ。

樹木希林さんが惚れるワケだ。

 

最近のロックは、メジャーになるとか、タイアップが付いたとか、紅白に出られたとか、そういう商売人かたぎでやってるから、ダサくてめっちゃつまんねぇよ。

Sings My Generation

このところ、私の記事で、ユーミンが書いた「いちご白書をもう一度」の歌詞の意味がわからね〜と、下の記事が読まれている。

 

長い髪を切って、就職するって?

なぜ、髪を伸ばしたの?

就職に不利な事、なぜするの?

 

アホか、オメエら。

少しは歴史を学べ。

 

最後の曲。

アニマルズ、ビートルズで、ストーンズは、欠かせないでしょ。

鮎川誠のベスト100 では、21位にランクインしている。

 

今夜はこれで終わりです。

おやすみなさい⭐。

Honky Tonk Women       The The Rolling Stones

Honky Tonk Women

Honky Tonk Women

  • ザ・ローリング・ストーンズ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ホンキー・トンク・ウィメン

脚本家・山田太一の世界。笠智衆主演・ドラマ「冬構え」。老いの旅路の果てに。

山田太一原作 笠智衆主演  『冬構え』【NHKスクエア限定商品】

今週のお題「名作」

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

本日は、脚本家・山田太一の世界、ドラマ「冬構え」をお送りします。

笠智衆さんのこと。

笠智衆さんと言えば、小津安二郎監督の作品で有名です。

大部屋時代も含めると、小津作品のほとんどに出演されているそうです。

「東京物語」「晩春」「麦秋」「秋刀魚の味」など、家族の絆を描いた小津作品の象徴的存在で、小津監督の名声が高まると共に、世界的に知られるようになった俳優と言えるでしょう。

 

山田太一さんが映画会社の松竹に入った頃、笠智衆さんは松竹の看板俳優であり、小津作品だけではなく、木下恵介や黒澤明などの映画にも出演していましたから、山田太一さんにとっても雲の上の存在だったわけです。

 

しかし、私の世代で笠智衆さんと言えば、山田太一ドラマのお祖父さん役であり、「男はつらいよ」シリーズの御前様(お寺の住職)でした。

(実際に、笠智衆さんは熊本県のお寺の息子で、数ヶ月間住職を継いだこともありました。)

 

ですから、小津作品を観て、私が感嘆する事と言えば、その当時から笠智衆さんが老け役を見事に演じていて、なんら違和感がないという事くらい。

 

小津ファンには申し訳ない事ですが、こればかりは如何ともし難いのです。

余談ですが、小学生の頃好きだった向田邦子さん脚本のドラマに、「寺内貫太郎一家」という名作があります。

そこで、おばあちゃん役だった樹木希林さん(当時は悠木千帆という芸名)が、当時は30代前半だったということを、私は大人になるまで知りませんでした。

 

本当にそれくらいの年齢だと思っていたので、これを知った時は驚きました。

今「東京物語」などを見返すと、笠智衆さんも、それにまさるとも劣らない老け役ぶりです。

実年齢は妻役の東山千栄子さんの14歳年下で、のちに山田太一作品「今朝の秋」で夫婦役で共演した杉村春子さんとは、父と娘の役で出ていました。

 

その老け役を演じてきた笠智衆さんが、山田太一さんの熱望によりその作品に出演する頃には、本当の老人になっていたのです。

笠さんの老優としての存在感が、否が応にも高まるのは、必定だったと言えるでしょう。

東京物語 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]

東京物語 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]

山田太一作品と笠智衆さん。

若い頃から、笠智衆さんとの仕事を夢見ていた山田太一さんです。

笠さんとの初仕事は、1975年の「男たちの旅路 第3部・シルバーシート」でした。

 

その後、連続ドラマ「夕暮れて」「沿線地図」、大河ドラマ「獅子の時代」と続き、笠さん晩年のNHK3部作「ながらえば」「冬構え」「今朝の秋」に至るのです。

 

この頃の笠智衆さんは、まさにいぶし銀と言ってよいでしょう。

その佇まいといい、風貌といい、画面に映し出されるだけで、崇高な輝きを放っていました。

山田太一さんの脚本が、その魅力を最大限に引き出していたことは確かです。

 

それに加え、当時NHKには深町幸男さんという素晴らしい演出家がおられました。

山田太一さんとタッグを組んで、数々の名作を手掛けられました。

「冬構え」も深町さんの演出です。

 

そもそも日本のテレビドラマで、高齢の役者さんが主役を務めるのは、極めて稀なことでした。

笠智衆さん、山田太一さん、深町幸男さん。

この3人のタッグがあって、孤高の作品を生み出したと言えるでしょう。

山田太一原作 笠智衆主演 『ながらえば・冬構え・今朝の秋』 DVD-BOX 全3枚セット【NHKスクエア限定商品】

山田太一原作 笠智衆主演 『ながらえば・冬構え・今朝の秋』 DVD-BOX 全3枚セット【NHKスクエア限定商品】

ドラマ「冬構え」の世界。死出の旅路。

前置きが長くなってしまいましたが、それは、このドラマを語るに、笠智衆さんという役者の存在は欠かす事のできないものだからです。

 

物語のさわりをご紹介します。

 

ひとりの老いた男が、東北へ旅に出ます。

連れはいない、一人旅です。

 

温泉地や名所・旧跡を周るうちに、宿泊したホテルの客室係の女性(岸本加世子)と知り合います。

事の始まりは、老人が多額のチップを渡したからです。

 

2日で5万円をもらった女性は、そのホテルの板前(金田賢一)と、独立して小料理屋をやりたいと思っているので、気前のよい老人との出会いをチャンスだと考えます。

 

老人は、自分が金満で気前がよいのを隠そうとはしませんが、実のところ、男が何者なのか、旅のいきさつや目的は何か、謎めいているのです。

 

そんなとき、チップをもらった女性と恋仲の板前は、調理場の親方を殴ってしまい、ホテルに居られなくなり、二人は老人の跡を追いかけます。

 

そして、ようやく出会い、同じ宿を取り、店を持ちたいという夢を語ります。

翌日、老人は別れ際にタクシーの座席から、若い二人に放り投げるようにポンと新聞紙の包みを渡します。

あっという間にタクシーは、その場を離れ、二人は新聞紙の包みを開きます。

すると、そこには150万もの札束が入っていました。………

山田太一作品集(1) 冬構え

山田太一作品集(1) 冬構え

 

こんな感じでドラマは進んでいきます。

初めのうちは、ちょっとコミカルな場面もあったりで、穏やかな心なごむシーンが多いです。

 

それも、岸本加世子さんの演技や笠智衆さんの熊本弁がいい味を出していることがひとつ。

そして、晩秋の紅葉に彩られた名所・旧跡を巡る笠さんの自然体の演技がひとつ。

また、そこで流れるギリシャ音楽の素晴らしさがひとつ。

 

そこで、同じくひとり旅をしている老女(沢村貞子)と道連れになるエピソードも、私たちを現実とは異なるハレの世界へと誘ってくれるのです。

 

しかし、この老人が気前がよいのも、あてどなく旅を続けるのも、理由がありました。

ボケが出始めて、旅に行けるのも今のうちだということではありません。

 

元気なうちに、子供たちの家族に迷惑をかけることなく、自ら死を選ぶ。

それは、誰が悪いせいでもない、自分のわがままだと。

 

齢八十を超えた老人は、それを遺書としてしたため、カバンに入れて旅に出たのです。

 

これがギリシャの作曲家ミキス・テオドラキスの挿入歌。

Dromii  Palii   ミキス・テオドラキス

The Very Best of Mikis Theodorakis

The Very Best of Mikis Theodorakis

  • ミキス・テオドラキス
  • ワールド
  •  

The Very Best Of Mikis Theodorakis

The Very Best Of Mikis Theodorakis

長生きするにこしたことはない、という正論が揺らぐとき。

現代においては、長生きする、ということは、誰しも疑う余地の無い価値観だと思います。

しかし、一生を通じて、現代人がこの考えを否定する可能性があるとしたら、死を目前に控えたときだろうと思います。

 

これほど老人にとって、切実な問題はない。

体が動かなくなって、もう世間では迷惑な存在だと思えば、私もあなたも、やはり相当ジタバタするでしょう。

 

主人公の老人は、近い未来に寝たきりになって、親類縁者の間をたらい回しにされ、やがて病院で廃品のように死を待つことを嫌だと思い、自分の考えを実行に移そうとします。

 

あくまで生きることが大切だという正論を拒んで、死を選ぼうと考える老人がいても、少しも不思議なことではない。

 

山田太一作品の特徴は、日常的な風景の合間に、観る人がハッとするようなテーマ性が潜んでいることです。

この「冬構え」も、そういった明確な作者の企図が感じられる作品です。

冬構え

冬構え

老いの哀しみ。

私の父方の祖母は、九十過ぎまで生きましたが、最後の十数年は病院での生活で、認知症が進み、ほぼ廃人状態でした。

まだ高齢者施設というものも、それほど整備されていなかった頃です。

 

両親が面倒をみていたのですが、病院も迷惑に感じているのが明白で、時折病院を訪れる母親に看護士がグチを言い、人間として扱われていないのがよく分かりました。

 

私には、そういう祖母がいたので、このドラマの老人が死に思い至るまでの背景が、漠然とわかるような気がします。

 

しかし、普通の人々は、その時々の年齢が思考するのではないでしょうか。

 

このドラマに登場する、今から小料理屋を持とうと思っている若い二人は、この老人に出会うまで、そんな孤独とは無縁でしかありませんでした。

 

かろうじて、似た境遇の祖父を持つ板前の男が、老人の不審な振る舞いに、ようやく気づくのです。

 

若い二人が東北の大地で、生き生きと跳ね回るラストシーンは、まさにそのことを物語っているように思います。

ところで、山田太一さんがこのドラマを執筆したのは、ちょうど五十歳でした。

 

これは、驚くべきことで、この稀有な才能を持った脚本家は、五十にして、老境の男の心の内部までを見据え、それとは対照的な若い男女の生命力と活力を、描き切っているのです。

 

他者の抱える問題を、自分の事として捉える眼がなければ、脚本など書ける訳がないのですから、当然と言えば当然です。

 

しかし、山田太一さんは、その人物の立場から物事を捉える力が、並の脚本家とはケタ違いに優れていたことは確かです。

 

そして、山田太一さんほど、老いや死といったテーマに正面から向き合った脚本家も稀でしょう。

先ほど述べた、笠智衆さんの出演作「シルバーシート」や「沿線地図」で、山田さんはすでに、このテーマに取り組んでいたのです。

 

山田太一さんご本人の訃報が伝わってから、いまだ半年にもなりません。

ご子息の話によると、山田さんご自身も、このドラマの老人が考えたように、堅くご自身の延命治療を拒否されたということです。

今朝の秋 (新潮文庫 や 28-11)

再び笠智衆さんのこと。

これから述べるエピソードは、上の新潮文庫のあとがきにある話です。

 

1984年、夏の事です。

山田太一さんは、笠智衆さんにあて書きして、この脚本を完成させました。

しかし、笠智衆さんは、なかなか出演を快諾してはくれませんでした。

自分はもう、齢八十になる。主役は無理だ。

それが笠さんの言い分でした。

 

山田太一さんは、それを聞き、これは笠さんのために書いた脚本です、撮らないでくださいと、演出の深町幸男さんに伝えました。

 

しかし、これだけの脚本を埋もれさせるのは惜しい。

深町さんとプロデューサーの岡田さんは、このような想いで、「ながらえば」で笠智衆さんと共演した宇野重吉さんに、この作品のオファーを出しました。

 

宇野重吉さんは、一週間経って、返事をされました。

以下、深町幸男さんの文を引用します。

深町さん、この脚本は面白い。ぜひとも出演したいと思いました。

何回も読みかえして、七十代の私は、八十代の主人公になるべく扮装も試みました。

でも、それは間違いだと思いました。

私には、八十歳をこえた老人そのものになり切ることができない。

作品をけがすことになります。

この老人は、笠さんそのものです。

その後、秋になると、笠さんは出演を良しとされ、山田さんの期待どおり、秋の東北を歩く笠さんの姿が、作品となりました。

 

この脚本は笠智衆さんそのもの、と言った宇野重吉さんの発言は、まさにそのとおりだと思います。

この重過ぎるテーマを背負った作品を、軽いユーモアを交えて、飄々と自然体で演じることができるのは、笠智衆さんだけだと、私も思います。

ユリイカ 2024年4月号 特集=山田太一 ―1934-2023―

ユリイカ 2024年4月号 特集=山田太一 ―1934-2023―

 

あとがき。

山田太一さんの小説「異人たちとの夏」が、アンドリュー・ヘイ監督により再映画化され、「異人たち」という邦題で上映されています。

原作は、私の大好きな小説です。

 

さりとて、山田太一作品は、テレビドラマにこそ、その真骨頂があると思うのです。

「冬構え」は、まさに世界に通用する名作だと私は思っています。

 

山田太一の名が、世界的なものになる日が来る。

それは、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

 

それでは、今夜はこれで終わりです。

おやすみなさい。

初恋の記憶。

Like Elijah, Jeremiah, Jesus, or Paul, you may be experiencing intense loneliness ...

小学校一年か二年、七つか八つの頃だった。

その人のことは、名前も容姿も声の抑揚も、はっきりと覚えている。

 

なぜその記憶が鮮明であるかというと、いくつか理由がある。

 

その頃の母との思い出が、生々しく残っていて、私は母に、その人のことが好きだとあからさまに伝えていた。

恥じらいもなく、あえて言えば、口ぶりに照れ笑いを含ませながら。

 

今となっては、そんな自分が嘘のようだが、その告白の一言一句をいまだに覚えている。

(そののち、私は母へこんな告白をしたことを、つくづく後悔した。)

 

ある日、くだけた感じの、他校の先生が、授業にやってきた。

授業のあと、その先生は、このクラスの人気者は誰か、というようなことをクラス全員に尋ねた。

 

みんながその人を指して、○○さんです、一番成績もいいんです、と声を上げた。

すると、その先生は、その人の体を胴上げするように抱え上げた。

おかっぱ頭に近い髪の毛が上下に揺れ、その人の歓声と笑顔があたりに弾けていた。

私は、遠くの虹を見るようなまなざしで、そこにいた。

 

時に愛は  オフコース

時に愛は

時に愛は

  • オフコース
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
時に愛は

時に愛は

  • Universal Music LLC
Amazon

その人は、それほど身の丈がある方ではなかったが、私はクラスで一番か二番目くらいに背が低かった。

だから、その人より私の方が小さかった。

 

その人は、私と接する機会があると、私の話を聞き、そうなの、と頭を撫でてくれることがあった。

ともに異性の意識が薄い、幼い頃の淡い友愛だった。

彼女との会話は、姉と幼い弟のようだった。

 

それでも、月日の経つにつれ、その人と接するときの胸の鼓動は、大きくなった。

話し掛ける言葉も、どこかぎこちなくなり、取ってつけたような会話になった。

 

思えば、それが記憶に残っている最後の会話だったのかもしれない。

その人は三年生になる前に転校してしまった。

Love        John Lennon 

Love

Love

  • ジョン・レノン
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

その人と再会したのは、高校一年のときだった。

小さな町の唯一の進学校で、成績のよかった子同士が出会うのは、めずらしいことではなかった。

 

およそ七年ぶりに出会ったその人は、とても小さく見えた。

 

その頃、私は自分をもてあまし、もがき苦しんでいた。

いじめにあい、落ちこぼれの登校拒否児のレッテルを貼られ、赤点ばかりで出席日数も足らず、卒業も危ういと言われていた。

 

その人がどんなに美しく輝いていても、私の眼には、澱んで小さなものにしか見えないのは当然だったかもしれない。

 

親にも先生にも世間にも見放されたと気づいたとき、私はある決心をした。

 

復讐のために勉強をしてやる。

馬鹿にした奴らを見返してやる。

 

それだけが目的の、勉強だった。

私の心根が腐り始めたのは、いうまでもない。

 

それでも、その人は変わらず私の心の奥底にいた。

Woman (2010 Digital Remaster)

クラスが違っても、教科は選択制で、その人とは時折同じ授業を受けた。

だが、こっちはグレかかって、友人はひとりもいないのだから、その人にだけ、話しかけようもない。

 

その人は、仲のよい女友達と、いつもおしゃべりに夢中だった。

ところがふと気づくと、その人は時折、私に視線を向けていることがある。

 

よくよく注意して見ていると、その人としゃべっている親友が、私を想っているらしかった。

人として出来損ないの私を想う親友のことを、かわいそう、と口元が動いているのだった。

 

Frajile         Sting

Fragile

Fragile

  • スティング
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Nothing Like the Sun

Nothing Like the Sun 

 

高校生活が終わり、その人がどんな人生を歩んだのか、私は何も知らない。

 

ところが、ある年齢を過ぎたあたりから、頻りにその人が、夢の中に現れるようになった。

なにか遠いまぼろしに会うように、無くしたものにすがるように、その人は私に語ろうとする。

 

これは、私の無惨な高校生活の、心残りなのかもしれない。

 

その人は、今どうしているだろうか。

私は老いぼれてしまったが、その人は、まだはつらつと、弾けた笑顔で暮らしているだろうか。

 

まさか、鬼籍に入ったがために、私の想いに気づいてくれたのだろうか。

 

私は、そんな縁起でもないことを、モヤモヤと空想し、終わりの日々を生きている。

初恋が泣いている   あいみょん

初恋が泣いている

初恋が泣いている

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

あとがき

薄々感じていたことではあるが、私が書くものの底流には、青春への悔恨がある。

このブログを書いているのも、過去の至らなかった自分へ向けて、ひとりごちているようなものだ。

 

今は、あまりに無知蒙昧だった自分に呆れ、少しであれ若い人の訓戒になれば、などど思っている。

 

最後に、前回のエッセイに続き、お読みくださった方に感謝します。

Loneliness

二十歳の頃。

Station

二十歳の頃。

私は、市井の凡人にすぎない。

だから、こんな私事など、だれも関心はないだろう。

 

だが、思春期の少年は、はたと気づけば老年を迎えている。

そんな一例だと思っていただけばよいと思い、書くことにした。

個の物語は、普遍に通じるものだ。

 

今後、私には、多くの時間が与えられる。よって、こんな書きものが増えてくるだろう。

 

いつものごとく、ブログ版 DJ だから、内容にちなんだ曲は添える。

それは、新聞小説の挿画みたいなものだと、思ってもらえばよい。

いつのまにか少女は 井上陽水

いつのまにか少女は

いつのまにか少女は

  • 井上陽水
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

その頃、私は怠惰な学生だった。

十九のとき、福岡から都会の街にやってきて、初めて一人暮らしを始めた。

 

高校時代は、いじめにあい、引きこもり気味の登校拒否児で、人づきあいなどしたことがなかった。

だから、忌わしい故郷を離れ、せいせいすると思っていたが、違った。

 

学生生活を送るために、最低限、必要な人としての知識や習慣、礼儀すら欠けていた。

一人、世の中に歩み出てみれば、そんな自分に呆然としたのだった。

 

そのとき、今の自分に大切なのは、学問より人間関係だ、と思った。

そして、人との交わりがふつうにできるようになりたいと思い、なにかと無理をした。

 

私は、心を病んで、思春期病棟に入り、しばらくの間、生活することになった。

Eleanor Rigby      The Beatles 

Eleanor Rigby

Eleanor Rigby

  • ビートルズ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

病院を出てからも、それほど急激に人が変われるはずもない。

 

その頃の私は、ほんとうに世間知らずだった。

人間というものを、知らなかった。

 

他人との交際が長続きしたことがなく、友人になっても、必ずと言っていいほど、つきあいを自分から放棄してしまうのである。

落ち込んでは、一人、下宿の布団にくるまり、引きこもっていた。

 

人として、世の中を渡ってゆく知恵も才覚もなく、暗闇に堕ちてゆくだけの蒼さがあった。

朝夕を送るのも苦しく、孤独に苛まれ、太宰治や坂口安吾を読むことだけが救いだった。

 

一人がつらくなると、ひたすら街を歩いた。

人混みに紛れ、精神の疲弊を肉体に置き換えることで、かろうじて息をしていた。

 

学舎へ足を運ぶことは、苦痛でしかなかった。

学校嫌いの私が、なぜ懲りずに進学したかと言えば、私をいじめた連中を見返すためであった。

 

私は、学問をしたくて進学したのではなかった。

その事実に、進学したあと気づき、またも唖然とした。

 

新たな学舎で、私は、再び落ちこぼれた。

周りは皆、初めから優等生で、この学校に入ってきたエリートに見えた。

親からの仕送りを受け取るのも、また苦しいことに思えた。

 

私は、いまだに自分の若い頃を憎む。

自意識ばかり過剰で、性欲ばかり強く、妬み嫉みばかりで、希望の大きさ故に絶望がある。

 

まったく、私の青春とは、ろくなものではなかった。

のちに、太宰治に師事した小山清が、何かに同じような感想を書いているのを読み、私は激しく共鳴したものだ。

Message in a Bottle         The  Police

Message in a Bottle

Message in a Bottle

  • ポリス
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

ここまで読んで、少しも具体性が無い、と思う人がいるかもしれない。

 

太宰治は、小説を書くことは、日本橋の真ん中で仰向けに寝る事と同じだ、と言った。

あらゆる芸能に通じることかもしれないが、自分の羞恥心を捨てなければ、文筆の業は成し得ない。

 

しかし、時代は難しくなって、私事のつもりが、他人に思わぬ迷惑をかけないとも言えなくなっている。

それは、私が無名の市井人であれば、よいというものでもない。

恋愛譚となれば、それはいや増す。

 

この苦しい時期、私は何人かの女性に恋したと思っていた。

しかし、私は激情から醒めると、すぐに恋愛ではなかったと気づいた。

 

ありていに言えば、私は学業や親の要求から逃げるために、女性にすがっていたのだ。

幸いに、私は女性たちに相手にされなかった。

 

そんな類の情熱が、報われていいはずがない。

そう思っていた。

その後も、申し訳ない気持ちばかりが募った。

 

なにか振られたことへの負け惜しみのようだが、これは私が泥にまみれながら、実感したことだ。

 

だが、この時期の恋愛なんていうものは、そんなものかもしれない、とも思うのだ。

異性を愛するなどという理念も感覚も無く、ただ本能的に相手を求める時期なのかもしれない。

 

多くの人は、そうやって、結びつきを悔やみながら、生きてゆくのではないだろうか?

そして、お互い頼り頼られることを、無意識にやっていたりするものなのではなかろうか?

そんなことを、今、思っている。

LADY       甲斐バンド

LADY

LADY

  • 甲斐バンド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

本編は、これで終わりである。

読む人が読めば、私がなぜ、こんなものを書く気になったかは、おわかりだろう。

 

山田太一さんのエッセイに「三か月だけの日記から」というものがある。

(『路上のボールペン』収録。)

その冒頭に「二十歳のころ」という課題で、と副題が付いている。

 

つまり、その課題をそのままに、自分の事として書いたまでなのだ。

山田太一さん気取りで。

そういう訳で、今年は終わりです。

最後は、今年、私が一番聴いた曲。

 

来年が、皆さんにとって、よい年になりますように。

おやすみなさい。

さよならの今日に あいみょん

さよならの今日に

さよならの今日に

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

脚本家・山田太一の世界。ドラマ 「 想い出づくり。 」結婚ファシズムに立ち向かう女性たち。

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

 

本日は、脚本家・山田太一の世界、ドラマ「想い出づくり。」です。

 

なぜこのドラマを最初に選んだのかと言えば、本当によくできたドラマであるということ、その一点に尽きます。

脚本はもちろんのこと、キャストも、演出も、音楽も、すべてが素晴らしい。

 

今の若い女性にしてみれば、こんな、女をバカにしたドラマってある? と思う方も少なくないでしょう。

しかし、かつてはこういう時代だったのであり、現実の結婚制度というものは、世代に関わらず、今もなお、多くの人たちを縛っています。

 

この作品は、決して他人事とは思えない、自分たちの周囲にいる等身大の女性像に、しみじみと共感できる、そんなドラマなのです。

 

また、現在、この作品はU-NEXT で配信しており、未加入の人はすぐに無料トライアルで観ることができます。

 

この記事を読まれたら、すぐにでも観たくなるような記事にしたいと思います。

それでは、ドラマのテーマ曲。

 

この曲聴いたことある、懐かしい、と当時を振り返り、余韻に浸る方も多いことでしょう。

演奏はフルート奏者のザンフィル。

作曲は、小室等です。

想い出づくり  ザンフィル

AgainII-Love Dramatics-

結婚ファシズムへ抵抗することの難しさ。

このドラマのON AIRは、1981年。

適齢期という言葉も現在では死語に近いですが、当時の時代背景は、とにかく男社会。

女性管理職など、ほぼ皆無と言っていい時代です。

 

20歳を過ぎて数年経つと、女性は周囲から、結婚、結婚と有形無形の圧力に押しまくられる。

今だったら、セクハラ、パワハラ、なんと言われることか。

それが家庭でも職場でも、大手を振ってまかり通っていた時代。

 

この結婚ファシズムとでもいうものに、若い女性が対抗するには大変な意志を要したのです。

 

まず女性自身が、女の幸せは結婚とか大真面目に言い、褒め称えられていたのですから。

もちろん、結婚したくてすること自体に、問題があるわけではない。

 

とにかく猫も杓子も同じ行動をすることに、少しくらい異議を唱えてもいいのではないか、と今だったら思いますが、当時はそうはいかなかったのです。

日本社会は、そういう一般常識をはみ出した考え方をとかく排除したがるのです。

いろんな世界標準の影響で、言葉には出しにくくなっていますが、現在も、さほど変わったとは言えないと思います。

 

その反動のせいか、途方も無い差別主義者や、ファナティックな愛国主義者が、ハッキリとした物言いで、多くの支持を集めているのも、今の時代のいびつさかなと感じます。

 

女性たちは、せめてもの抵抗ということを意識してか否か、時代をくだるごとに、結婚しなくなってきました。

 

仕事をして、結婚して、子供を作って、ゆとりある生活を築く。

もはや、そんな理想の暮らしができるとは、とても考えられない、夢を描けない現実が社会を覆ってしまったのです。

 

それでも、まだまだ地方では、結婚至上主義の考え方は、ほとんど変わっていないようにも思えます。

仕事をする女性は増えたけれど、私は結婚しない、と言ったりすると、職場ではセクハラになるからあまり言われないけれど、家族や親戚たちは「変わったおなごだ」という言い方でしか、とらえようとしない。

 

変わったようでいて、実際はそう変わっているわけではないという気がします。

このドラマは、そんな女性たちの、愛情と結婚をめぐる物語なのです。

ドラマの参考文献として、テロップにクレジットされていた「ゆれる24歳」。

 

男社会に生きる女性たち、三者三様の青春群像劇。

それでは、ドラマの登場人物を中心に、物語のさわりの部分をご紹介します。

 

物語は、仕事を持つ20代前半の女性たち、3人の出会いから始まります。

演じたのは、古手川祐子、田中裕子、森昌子。

(山田太一さんは、基本あてがきなので、イメージがわきやすいよう、以降キャスト名で登場人物を呼ぶことにします。)

〔あてがきとは、脚本家がキャスティングされた役者をイメージして脚本を書くこと。〕

 

「映画なんか観る? 海外旅行に興味ない?」

3人は、街行く女性に声を掛けるキャッチャーの誘いに乗って、旅行会社の説明会に揃って出席します。

 

香織役の田中裕子と典夫役の柴田恭兵。

 

その女性キャッチャーが柴田恭兵。

柴田恭兵は、チンピラふうで、ワルだけど、どこか憎めない、二枚目。

序盤では、3人の目の仇にされて散々な目にもあい、何度も彼女たちのアパートから叩き出されては、目を白黒させて昏倒するような、笑えるシーンも。

 

この説明会で募集する、格安の会員制海外旅行クラブは、結局のところ入会金詐欺なのですが、勧誘員の柴田恭兵は、入会金を返せと迫る3人のひとり、古手川祐子に一目惚れしてしまいます。

 

久美子役・古手川祐子。

 

古手川祐子は、静岡の実家を飛び出し、東京に出てきて一人暮らしをしている女性です。

職場は、小田急ロマンスカーの中。

「走る喫茶室」勤務の接客乗務員で、乗客におしぼりや飲み物、お弁当を配ったりする毎日。

 

一方、柴田恭兵は、女性を引っ掛けるような仕事しかしていない、グウタラで不良じみた男。

古手川祐子が下宿しているアパートや職場の周りをしつこくうろつき、トリッキーな行動や芝居がかった告白で、彼女の心を揺さぶってゆくのです。

 

ここら辺の感想を、九州のおふくろたちに言わせれば、「しょうもなか男に引っかかってくさ、どんこんしょんなかねえ」、となるのですが(笑)。

 

 

田中裕子は、やはり実家のある福島から東京に出てきて、一人暮らしをしているOL 。

商事会社に勤めて、お茶くみやコピー、書類の整理など、男性の補助的な作業を強いられ、仕事にも恋愛にも生きがいを見出せない、ため息ばかりの日常の中にいます。

 

そこで、上司である課長から見合い相手を紹介してもらったりするのですが、無難そうな相手にいまひとつ、燃え上がれない気持ちが勝ってしまう。

そこで、ひょんな落とし穴にハマることに。

 

のぶ代役の森昌子。

 

森昌子は、唯一東京生まれの下町育ち。

学歴の無い父親は小さな工場の職人で、父母と弟の4人暮らし。

 

女性作業員ばかりの工場に勤める、地味な女性です。

森昌子とは、意外なキャスティングですが、これが見事にハマります。

 

そこで、父親の勤める工場の社長の甥と見合いをすることに。

盛岡から見合いに来て、ガソリンスタンドとドライブインの経営者というふれ込みで、とにかく押しの強い、ガサツな男。

 

これを演じるのが、加藤健一です。

この役ほど、カトケンの個性を引き出したハマり役はない。

 

たとえば、喫茶店に入ると、待ち合わせしている森昌子の目の前で、両手でパーンと音をさせておしぼりの袋を破り、思い切り顔中をくまなく拭います。

これが一事が万事で、とにかくダサい、東北弁丸出しの中年男です。

 

右から森昌子、加藤健一。

 

しかし、加藤健一はお見合いを断られても、森昌子を決してあきらめないのです。

土産物を持参したり、父親の工場の社長を頼ったり。

 

ガンとして、あきらめません。

しまいには、2階にいるのぶ代の部屋まで押しかけて「交渉」に当たります。

この厚かましさには、ほとほと手を焼くしかないありさまです。

 

こうして、三者三様のアンチ結婚ドラマが進んでいきます。

3人は、互いに近況を報告し合い、力を合わせて、困難に立ち向かってゆくのです。

常識をはみ出したものの魅力。

序盤を観ながら思うのは、柴田恭兵の、古手川祐子への愛情表現についてです。

これは今だったら、完全にストーカーで、誰しもアウトと思うでしょう。

 

しかし、今の時代はストーカーという概念ががあるから、そう見えてしまうところがある。

それゆえ、柴田恭兵の魅力を、古手川祐子のように発見することは、とても難しくなってきていると思います。

 

恋愛において、好きになった相手を求めずにはいられない、そんな激情を抱くのは、ごくふつうのことでしょう。

そういう激情のせいで、相手へのしつこいくらいの求愛行動に出る人間は、今だっていないはずがない。

 

もちろん、ほんとうの愛情なのかを見極める目は必要です。

 

しかし、今の時代、求愛される側はちょっとしつこくされると、これはストーカーだと思って過度に警戒したり、求愛する側は恋焦がれているのに、ストーカーという言葉が浮かび、これ以上しつこくできないな、とか思ってしまうのではないでしょうか?

 

現代は、あふれかえる情報のために、刷り込まれた概念が多過ぎて、人物やものごとを、もっと柔軟に、しなやかに捉えることが難しくなってきているのではないでしょうか?

 

柴田恭兵のような人物を描くことで、こんな愛情表現しかできない男もいていい、という山田太一さんのドラマ的意図があることは、確かでしょう。

 

このことは、森昌子の見合い相手、加藤健一にも言えます。

ちょっと、とんでもなく非常識な人なんだけれども、あまりに型破り過ぎて、その魅力に気づきにくい。

だけど、常識からはみ出していると、どこか惹きつけられる。

 

そんな人間の魅力を、山田太一さんは描きたかったのだと思います。

 

想い出づくり (山田太一作品集)

山田太一脚本の中でも、屈指のエンタメ性を発揮したドラマ。

山田太一さんのドラマは、ミステリーではありません。

平凡な人々の暮らしをていねいに描きながら、エピソードを重ねていく。

 

けれど、ありふれた生活を揺さぶる人物や出来事によって、玉突きのように、登場人物たちの様相が変化してゆきます。

 

平凡な日常が、いつのまにか姿を変えてゆく様は、劇的でスリリング。

これが脚本の力なのだと、痛感させられるのです。

 

まず、2話まで観たら、もうこの続きを観ずにはいられなくなるでしょう。

 

そこで、面白さの要素をいくつか挙げていきます。

どうしても、多少のネタバレは含んでしまいますので、純粋に先入観無くドラマを観たい方は、ドラマ全編を先にご覧になってください。

 

その方が、面白くこの記事が読めるかもしれません。

観てしまってのちに、この続きを読んで頂けたら、嬉しい限りです。

①造形されたキャラクターの見事さ。

主役の3人、古手川祐子、田中裕子、森昌子、それに柴田恭兵は、先ほども紹介しました。

役どころは、ピッタリ、それぞれの持ち味が活かされています。

 

古手川祐子は、気が強い反面、ちょっと甘えん坊なところがある、夢想家。

柴田恭兵とのことで気がめいってしまうと、静岡の実家の両親に甘えたくて、帰省してしまうようなところがある。

 

田中裕子は、夢想家だけれど、物事が見え過ぎて困惑しているようなリアリストの面も。

彼女が課長から引き合わされた矢島健一に、見合いという風習の没論理性を愚痴るところなどは、とても説得力があります。

 

森昌子は、いかにも下町育ちで、工場で働いていそうな地味な女性。

3人の中では、一番奥手で男性と付き合ったことも無さげな、純情で素直な性格です。

勉強のできない高校生の弟を、親身になって心配しており、そんな優しさもある下町の人情家なのです。

 

 

加藤健一は、さきほども言ったように、森昌子に強く結婚を迫る役どころが見事です。

観ていて演技者としての迫力がすごい。

 

こんなに存在感のある役者がいるのかと、感嘆せずにはいられない。

画面に登場するたびに、可笑しくて笑えて、とにかく面白いです。

 

役者としての彼は、当時から加藤健一事務所を立ち上げ、現在に至るまで、下北沢の本多劇場で、定期的に芝居を打ち、主役を演じています。

私が小演劇の世界に惹かれ、下北沢に通うようになったのは、加藤健一の芝居を観たかったからでした。

 

右から、古手川祐子、田中美佐子。

 

そして、彼らの周りにいる人々の造形も素晴らしい。

柴田恭兵には、元カノが付きまとっています。

 

これを演じているのが、当時はまだ無名だった田中美佐子です。

クレジットには、田中美佐、の名前で出てきます。

 

田中美佐子は、柴田恭兵の周りを影のようにうろつき、古手川祐子の強力なライバルとして、立ち現れます。

古手川祐子とは逆のタイプで、気は強いところは同じでも、優男(やさおとこ)の柴田恭兵を甘やかし、体の魅力で引き留めようとします。

 

典夫役・柴田恭兵、古手川祐子の父親、吉川武志役・児玉清。

 

古手川祐子の父親を演じるのは、児玉清です。

娘の事を心の底から心配し、娘にも男にも振り回されながら、二人の理性に訴えかけて説得するその姿には、本当に心を打たれます。

 

みなさん、児玉清といえば、華丸のモノマネをイメージする方が多いと思います。

しかし、実は、というのも変ですが、数々のドラマに出演して、素晴らしい演技を見せてくれた、すごい俳優さんです。

 

山田太一作品では「想い出づくり」より少し前の「沿線地図」でも銀行員の父親役で、やはり見事な存在感でした。

 

池谷信吾役・佐藤慶。

 

田中裕子の実家の両親は、佐藤慶佐々木すみ江です。

佐藤慶は、これも「想い出づくり。」と前後して書かれたNHKのドラマ「夕暮れて」でも佐藤浩市の父親役が素晴らしかった。

 

福島の市役所勤めで、お堅い役人肌。

娘の東京での生活を心配して、娘のアパートにひょっこり現れ、思い上がりも23までだ、などと福島訛りで結婚を迫るのです。

その地方の役所勤めの中年男という佇まいが、うまくはまっていて、これまた面白いのです。

 

佐藤慶の役の見せどころは、それだけではありません。

毎日を仕事に明け暮れているうちに、若さというものから、いつの間にか遠ざかっている中年男の、若さへの憧憬や羨望、これからはただ歳を取っていくだけだという焦燥と諦念を表現しているのです。

 

平成となって、数年経った頃。

NHK BS の草創期に、「山田太一の世界」という番組が、1ヶ月ほどのあいだにわたり、放送されたことがあります。

 

その中で、司会が八千草薫さんで、山田太一さんご本人が登場されて、TBS の大山勝美さんなどと対談をされる番組がありました。

 

番組では、ドラマの出演者がVTR で登場して、いろいろなコメントをするのですが、佐藤慶は、「想い出づくり。」の役でもらったセリフを、その場で読み上げていました。

信吾「年とって行くとな、若えってことが、まぶしいような気がするもんだ。身に沁みて若さが縁遠いような気がするもんだ。会合ったって、四十五十ばっかで、急に気ィつくと、若ェってことは、ずーっと遠くに行ってしもうとる。」

(大和書房「山田太一作品集12 想い出づくり。」より引用。)

 

佐藤慶は、先ほどあげた「夕暮れて」でも、そういう役どころでしたから、とりわけ思い入れが強かったのだろうと思います。

 

佐々木すみ江は、この後「ふぞろいの林檎たち」で、中井貴一の母親役で出てきます。

夫よりも歳上で、教師上がりの嫁という立ち位置で、これまた娘の結婚について、やかましく干渉します。

ここらの演技には定評のあるところで、また大いに笑わせてくれます。

 

 

そして、森昌子の家族。

父親は前田武彦、母親は坂本スミ子。弟は、安藤一人

左手にいるのが、前田武彦の勤める工場の社長夫妻、三崎千恵子高桐真です。

 

この家の茶の間での会話も、また面白い。

どうぞ、ドラマで堪能してください。

 

②一度聞いたら、忘れられないセリフの数々。

山田太一さんは、役者に対して、セリフを一言一句変えないように、と言っていたことで有名です。

それが役者でも演出家でもない、山田太一さんの、脚本家としての矜持だったのだと思います。

 

それにしても、人間の心の機微を捉えるセリフの豊かさには、驚かされるばかりです。

どうして、こんなにいろんな人の心がわかるんだろう、と思ってしまいます。

 

ここでは、①でお話した登場人物たちの、恋愛と結婚をめぐる台詞の数々を、ご紹介します。

(引用元は、大和書房「山田太一作品集12 想い出づくり。」です。ト書の一部は省略させて頂きました。)

 

典夫「他になんにもねえのか、手前ら、結婚までに、他になんにもねえのか?」

香織「なんにもなかないわよ」

典夫「なにがあるんだ? なにがあるんだ?」

 

テレビの画面

桂文珍「女の人っちゅうんは、クリスマスケーキと同じでんな。二十五過ぎたら急に売れんようになる」

 

のぶ代「だから来ないでください。もう、あの、お見合いのことは、正式にお断りしたんだし、来るの、変だと思いますから」

二郎「いえ、諦めません」

のぶ代「だって、それじゃ」

二郎「あきらめないこと。その一点で、私は自分の人生を切りひらいて来たんでございますから」

 

信吾「二十三の女に、他になんがある?」

香織「なんだってあるわよ。仕事で、どういう苦労してるか、とか」

信吾「そんな事はいっときのことだ。問題は、なんだかんだ言うたって、結婚だ。どんな男と結婚するかで、女の後半生は決まっちまうだぞ。それがこの一、二年で、決まるだ。七十、八十まで生きるとすりゃあ、これからの五十年以上が、この一、二年のお前の選択にかかっとるだ」

 

のぶ代「お母さん、あの人と本気で結婚しろって言うの?」

静子「しろとは言わないよ。しろとは言わないけどね」

のぶ代「私、本気でやだっていってるのよ」

静子「お化けやフランケンシュタインじゃないんだよ、あの人は」

 

典夫の部屋の外

妙子「そりゃあ、あいつをひっかけりゃあ、あとあと金になるだろうけどね、そこまでやることはないって、みんな笑ってるよ」

典夫「ー」

妙子「私だって、笑っちゃうね、ハハハハ。カテリーナのマスターの奴、評価するね、だと。ハハ、冗談でしょ。女にいいとこ見せるなら、もうちっと」

典夫「ー」

妙子「気の利いたことして貰いたいよう」

典夫「ー」

妙子「働きゃあ女が惚れんならね、全国の飯場のお父さんは、女にもてもてのはずじゃないの。ふざけんじゃないよ」

妙子役の田中美佐子。テレビ初出演だった。

 

由起子「だって、お父さんはねえ」

香織「聞いたわよ」

由起子「若い女のお尻追っかけ回して、市役所休んで、行方不明になったりしたのによ」

香織「行方不明は(オーバーよ)」

由起子「全然非難されないどころか、お堅い池谷さんも人の子だったなんて、株上がったりしてるのよ」

香織「(苦笑)」

由起子「それならまだしも、裏切られた私の方は、どうよ? 気の毒だなんていってくれる人はいなくて、あの先生上がりの怖いような奥さんじゃ、浮気もしたくなるだろうってまるで浮気は私のせいみたいなんだから」

香織「わかった」

由起子「お金くらい使わなきゃ、おさまりゃしないわよ」

由起子役の佐々木すみ江。

 

久美子の声「男の人は、努力をしたりすると、それで自分の人生がひらけてくるけど、女は余程の力がない限り、努力をしたり、仕事を一生懸命しても、たいていは結婚する相手次第で後半の人生が決まってしまう。私は、なんとかそんな風じゃなく生きて行こうと思うけれど、特別なにか才能があるというわけじゃないしー」

 

マスター「お宅、本当に本気なの?」

典夫「なによ、それ」

マスター「遊びなら、彼女可哀想だよ。親御さんも、随分苦労してる」

典夫「本気だよ」

マスター「だったら、何故仕事探さねえんだよ? なにふらふらしてんだよ? ちゃんとしろよ」

典夫「ちゃんとってなんだよ?」

 

香織「心から好きになれる人っていうのが、どうして理想が高いの?」

由起子「あんたの基準が高いじゃない。岡崎っていう人、とってもいいそうじゃない」

香織「お父さんが、よくったって」

由起子「ほどほどによけりゃあ、決心した方がいいの。そんな、白い馬に乗った王子さまが現れるわけないんだから、そういう人と一緒になって、そのうち、かけがえのない人だなって、そういう風に思ってくるもんなの」

香織「ー」

由起子「帰る気ないなら、その人と一緒になんなさい。なんなさい! 贅沢いってないで!」

香織「逢ってもいないのに、よくそんなこといえるわねえ(とクッションを母にいくつも投げつける)」

 

のぶ代「私はいやなの。私はそんな人と一緒になりたくなかったの。何度もそういったわ。でも、みんなで、人生こんなもんだとか、義理が悪いとか、男なんてみんな同じとか、お金があればなによりとか、よってたかって、おどしたり、すかしたりして、ここまで持って来たんじゃない。私、仕様がないかなあ、と思ったけど、やっぱり嫌だって分かったの。嫌なの。私は心から、対等に私を愛してくれる人と結婚したいの」

 

信吾「ええか。尻馬に乗って、付け上るんじゃねえ。」

香織「私がなによ」

信吾「八件もの見合いの話を、にべもなく断って、それじゃこっちに恋人がいるかっていやあいねえ、という。それじゃあ人生なめてるとしか言いようがねえ」

 

 

典夫「ー久美子さんは」

武志「気に入らないんですよね」

武志「うむ」

典夫「金だけじゃなくて、少しは働いてて楽しい仕事を、あっちこっち探してやって行きたいんだけど、そういうのは、やだっていうんですよね」

武志「うむ」

典夫「一つの仕事をずっとやれっていう。一日机に向かってるとか機械をいじってるとか。しかし、特別金になる訳じゃなし、なんでそんなのがいいのか分かんないのよね」

武志「そりゃあ長い目で見てるからだろう。当座入る金は少なくても、定職についていれば、昇給もあるし、保証もある。目先の面白さで転々としてたら、そりゃ今はいいかもしれないが、少し年を取ったら、仕事はなくなるだろう」

典夫「だから、なくなったら地道にやるしかないでしょう。それまで自由にやりたいっていうのが、どうしていけないんだか」

武志「不安なんだよ。女はそれでは不安なんだ」

典夫「ー」

武志「いま職を転々としている人間が、三十になったら地道になるという保証はない。女は、結婚の相手に安定が欲しいんだ」

典夫「ー」

武志「ほんとに、あの娘が好きなら、定職についてくれよ」

典夫「ー」

武志「そして、結婚してくれ」

典夫「ー」

武志「たしかに、それは君を縛ることになる。定職も君を縛るし、結婚も君を縛る。そうやって、自由を縛られるのが嫌なら…別れてくれ」

典夫「ー」

武志「これでも親なんでね、同棲を我慢しているのも限度がある。もういいだろう。もうどっちにするか決めてもいいだろう」

典夫「ー」

武志「こんな(感情溢れ)話の分る親はめったにないぞ。少しは、こっちの身にもなれよ」

典夫「(間あって、うなずく)」

 

 

この場面、父親の心情あふれる児玉清の熱演は、本当に感動ものでした。

ここが、私の一番お気に入りのシーンかな、と思います。

 

ドラマには、まだまだ、こんなセリフはあって、シナリオにはない楽しい演出も、いろいろ盛りだくさん。

これ以上、続けると、全編観てくださいという感じになりますので、ここらでやめときます。

 

雑踏の中の言葉。

ドラマの最後。

渋谷の雑踏に紛れて、3人が別れ別れになるシーンがあります。

 

このシーンまでたどり着いた皆さんは、ここで流れる古手川祐子のモノローグと、まったく同じ気持ちになるはず。

想い万感、という素晴らしいラストです。

 

山田太一さんは、街の中で、ふと聴こえた声が、とても魅力的だと書いていらっしゃいます。

ドラマを書く楽しみの六十パーセントぐらいは、それに類する台詞がいきいきしてくる場を作ることにある、と。

 

どこにでもいる女性たちの、街や職場で聴こえる言葉が、これほど素晴らしく、美しい結晶となったドラマは、そうそうないはず。

 

皆さんも、もう一度、その声を聴いてみてはいかがでしょうか?

 

 

本日は、これで終わりです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

 

最後の曲。

サビが、あー、って感じですが。

〇〇ちゃん  あいみょん

○○ちゃん

○○ちゃん

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

想い出づくり DVD-BOX 全14話収録

想い出づくり DVD-BOX 全14話収録

*本記事に掲載した写真の一部は、ドラマのPR 動画から引用したものです。

クリスマスイヴの「照和」に「かりそめのスウィング」が流れていた。

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。


この写真は、本日撮影した「照和」の店先です。

コロナ禍もようやく収束し、ジングルベルに浮かれた街は、たくさんの道ゆく人で賑わっていました。

 

今日も、照和で写真を撮って来ましたので、ご紹介したいと思います。

かりそめのスウィング  甲斐バンド

かりそめのスウィング

かりそめのスウィング

  • 甲斐バンド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

好きな照和出身アーティストのリクエスト。新聞のスクラップ。

お店の方が、ひとりで入って来た私に、声をかけてくれました。

「どなたの曲をかけましょうか?」

 

好きな出身アーティストの、リクエストができるのです。

甲斐さん、とリクエストすると、早速、どでかいアンプから、この曲が流れて来ました。

かりそめのスウィング

かりそめのスウィング

  • EMIミュージックジャパン
Amazon

店には、出身アーティスト関連のスクラップもたくさんあります。

 

店の人は、甲斐よしひろの西日本新聞連載の「九州少年」の切り抜きノートを持って来てくれました。

これは、単行本になっているので知っていましたが、切り抜きならではの意匠が施されていました。

表紙には、漫画家の萩尾望都さんのイラストが貼り付けてあるのです。

 

新聞連載のとき、日本には、挿画という文化がありますね。

そのときの一枚でした。

 

この挿画は、甲斐よしひろの少年時代。

この切り抜きは、西鉄ライオンズの思い出を語ったもの。

 

挿画には、もう一枚ありました。

シンガーになってからのもの。

ほとんど少年時代と変わってないですが、これが萩尾望都さんにとっての甲斐よしひろなのでしょうね。

萩尾望都さんは、甲斐よしひろの大ファンで、甲斐バンドの楽曲タイトルを題名にした漫画を描いているほど。

甲斐がこの連載を書くときに、萩尾望都さんに、文章指南を受けに行ったと記憶しています。

 

ちなみに、この文章に出てくるボンゴ奏者。

これが、下の記事で紹介した、フルノイズの井上マサルさんです。

 

氷の世界  井上陽水

氷の世界

氷の世界

  • 井上陽水
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

井上陽水の記事スクラップ。

寒い日が続いていますので、実感として聴きたくなりますね。

 

井上陽水は、ほんとうにすごい人で、1973年にこの同名タイトルのアルバムが、日本初のミリオンセラーを記録。

 

そして今、誰でも知っている代表曲「少年時代」を書いたのが、1990年。

20年近く経ってからです。

そして、中島みゆきやユーミンなどと並んで、時代を通して常にヒット曲を出している。

 

果たして、井上陽水のスクラップブックもありました。

照和にあるスクラップノート。

上左 甲斐よしひろ、上右 財津和夫、下左 井上陽水、下右 武田鉄矢。

 

これも、西日本新聞の連載。

ただし、本人が書いたものではありません。

 

あまり、保存状態が良くないので、陽水ファンでもある私は、新しいスクラップブックに貼り直して、読み通したいと思いました。

「九州歌謡地図」。

けっこう、長い連載なのです。

 

この記事は、井上陽水を見出した、RKB 毎日放送のディレクター・野見山實さんの視点で陽水のデビュー秘話を綴ったもの。

氷の世界(限定盤)(UHQCD)

氷の世界(限定盤)(UHQCD

 

この本も照和にありました。ファン垂涎です。

音のそとがわで (1975年)

 

訪れた人が綴る照和ノート。

お店には、照和ノートというものがスクラップに並んで置いてあります。

訪れた記念に、ファンが書き記す雑記帳です。

 

直近では、今年チューリップの50周年記念コンサートがあり、そのついでに寄った方々が書いていらっしゃるようでした。

ここは、ファンの聖地巡礼の場であるのです。

 

今回、私も書いてきました。

下の写真のやつにです。

店の人にボールペンを借りて、もちろん直筆です。

店の人が、リニューアルして次のノートを作りましょう、と言っていましたので、皆さんが訪れるときには、新しくなっているかもしれません。

 

最後の曲。

今年も戦禍は止むことなく続いています。

しかし、ひどい世の中と言っていても、なにも変わりません。

 

偽善者と呼ばれてもいいではないですか。

世界の困窮に苦しむ人のために、募金でもなんでも、出来得る範囲で、行動を起こしましょう。

募金は、ユニセフや、国境なき医師団など、信頼できるところへ。

それでは、最後の曲。おやすみなさい。

Happy Christmas (War is Over)       JohnLennon & Yoko Ono 

Happy Xmas (War Is Over) [feat. The Harlem Community Choir]

Happy Xmas (War Is Over) [feat. The Harlem Community Choir]

  • ジョン・レノン, オノ・ヨーコ & プラスティック・オノ・バンド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

脚本家・山田太一の世界・序章。世の中に適応できないことの魅力。

街で話した言葉―山田太一談話集

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

 

皆さんは、山田太一という脚本家を知っていますか?

そのドラマを観たことがありますか?

 

私は若い頃から、その作品世界に触れ、同時代を生きてきました。

山田太一ドラマを、世の中の人に広く紹介すること。

 

これは、私のライフワークのひとつだと、ずっと心の中で想いを温めてきました。

私もずいぶん馬齡を重ね、ようやく、この仕事を始めてみようという気になりました。

 

今回は、その序章です。

もう森へなんか行かない  フランソワーズ・アルディ

Ma jeunesse fout l'camp

Ma jeunesse fout l'camp

  • Francoise Hardy
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この曲は、ドラマ「沿線地図」の主題歌。

最近、録画したDVD で観ました。

やっぱり山田太一さんはすごいと、あらためて思いました。

 

数年前、BSトウェルビで再放送があったのです。

とにかくBS トウェルビは、いいドラマを再放送してくれるので、ドラマファンにはありがたい限りです。

山田太一と言えば「ふぞろいの林檎たち」でしょうか?

山田太一の代表作と尋ねられ、まずみんなが思い浮かべるのが「ふぞろいの林檎たち」だと思います。

もう少し年配の方やドラマ通の人だったりすると、「岸辺のアルバム」という答えが返ってくるかもしれません。

しかし、私の世代だとどうしても「ふぞろい」なんです。

 

どうしてかというと、これは落ちこぼれの、3流や4流と言われている大学生と専門学校生の話。

世の中のほとんどの一般庶民は一流ではないわけですから、彼らの悩み多き日常が視聴者の心をつかんで、ひとつの大きなムーブメントとなりました。

 

当時の大学生や専門学校生なんかは、みんな観ていたという気がします。

しかし、私は生来のヒネクレ者のせいか、山田太一ドラマの中で、なぜか好きになれない。

 

山田太一さんには申し訳ないけれど、一番の代表作とは思えないんです。

 

それは、私がその作家の世論的な代表作を手放しで持ち上げたがらない、いわゆるスノッブ(俗物)であり、ディレッタント(芸術愛好家)であるせいかもしれません。

 

ですが、そこを除いても、山田太一さんには「ふぞろい」をはるかにしのぐ、大傑作の数々がある。

 

私としては、そこを一番言っておきたいと思います。

ふぞろいの林檎たち DVD-BOX

ところが最近、ある批評家の山田太一論を読んで、今ひとつ「ふぞろい」を好きになれない、もうひとつの理由がわかったような気がしました。

 

山田太一さんは、世の中に適応できないことの魅力みたいなものを、常々メデイアで話されていて、生活者としては落伍者だと思っていた自分の、大きな支えになっていました。

 

私の共感する主人公たちは、世の中の不適応者で、孤独の中であがいていたような人物でした。

しかし、エリートでない学生の群像劇だと、大多数の若者はその中に含まれてしまいます。

 

登場人物たちは、多少の不満こそあれ、仲間がいて、コミュニティを作って、平凡ではあるが、どこにでもある日常を生きて、一人、孤独にさいなまれることはない。(唯一、例外なのが国広富之の役でしょうけど。)

 

人生をはみ出しかけている孤独な主人公の呟き、すなわちモノローグ(登場人物が視聴者に直接語りかける手法)のないドラマが成立しているのです。

光と影を映す

光と影を映す

  • 山田太一
  • 伝記/自叙伝
  • ¥1,100

山田太一さんは、落ちこぼれ学生の方が魅力がある、というテーマを描いてみたかったと言っていました。

 

ですが、私からすれば、登場人物たちは世の中に反発しながらも仲間と支え合い、寄り添いあって生きているという気がする。

私には、そこのところが、これまでの山田太一ドラマの主人公との大きな違いだと感じていたのです。

 

「それぞれの秋」、「岸辺のアルバム」、「沿線地図」、「想い出づくり。」「早春スケッチブック」。

これらの主人公は、みなモノローグで視聴者に語りかけます。

 

彼らは、共同体であるはずの家族の中で、孤独を抱えて生きていました。

 

それがなにより、私が山田太一作品に共感を覚えていた理由ではなかっただろうか…。

そう思ったのです。

山田太一 ---テレビから聴こえたアフォリズム (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

KAWADE夢ムック 文藝別冊 山田太一 テレビから聴こえたアフォリズム

 

山田太一作品との出会い。

もうひとつは、サザンの曲がドラマの全編にわたって流れる、というのも要因かもしれません。

 

はあ? という方がいて当然です。

というのは、私が山田太一という脚本家を知ったのは、甲斐よしひろのラジオ番組を通してなのです。

 

当時、甲斐よしひろは、番組の中で山田太一さんの作品について、たびたび語っていました。

NHKのドラマ「夕暮れて」のシナリオ本は、海外のレコーディングに持参したとか、「早春スケッチブック」の岩下志麻さんの存在感がすごいとか、しゃべっていました。

 

そして、山田太一作品の新作がスタートするというニュースです。

放送開始いきなり驚きでした。

 

ドラマの冒頭から流れる「いとしのエリー」。

しかも、ドラマで流れるのはすべてサザンの曲。

 

当時、甲斐バンドと人気を二分するバンドだったサザンの曲を、山田太一さんのドラマで否応なく聴かされるのは、やはり私にとって、苦痛だったのだと思います。

 

無名時代のサザンを、いち早く自分の番組でプッシュしたのが甲斐よしひろでしたから、なんとも言えない気分でした。

 

ですが、これはあくまで私の個人的な事情というだけで、作品自体の価値とは何の関わりもありません。

ドラマの全編で、ひとつのバンドの曲を流すという試みは、斬新で画期的なものでした。

 

それがサザンだったというのも、80年代の空気にぴったりフィットしていた。

私がこの企画に携わっていたとしても、大賛成したと思います。

批評する思考の欠如した日本人。

今回は、私の山田太一論・序章です。

抽象的でわからないところが多かったと思いますが、わかりにくい分は、個々の作品を論じる中で、その素晴らしさをお伝えしたいと思っています。

 

たとえば、サブタイトルに挙げた、世の中に適応できないことについて。

そりゃダメに決まってるだろう。

生活力が無いってことじゃないか。

何を言ってるんだ。

 

普通に考えたら、それが世間一般の常識だし、いつかその価値観をそのまま受け入れて、みんな生きていくことになる。

だけども、現実には世の中に適応できなくて、苦しんでいる人はたくさんいるわけです。

そういう当たり前と思っていた価値観のために、自殺する人だって大勢いるだろうと思うのです。

 

本当に、世の中に適応することが、すべて なんだろうか?

むしろそういう生き方を、本当に実現して生きている人は少ないんじゃないか?

 

自己に対しても他者に対しても、批判することなく、生活に流されて、当たり前という観念に支配されて、生きているだけなのではないか?

世の中に簡単に適応することの方が、よほど気持ち悪く、薄気味悪いことなんじゃないか?

 

山田太一さんのドラマは、そんな問いを投げかけてくるのです。

その言葉には、はかり知れない重みがある。

山田太一さんは私が真に尊敬する、心の師とも言える方です。

 

10代から現在まで、ほぼ半世紀にわたり、メデイアで知り得た情報は必ずチェックし、ドラマ、書籍、演劇と、その作品、発言に接してきました。

 

福岡の講演会では、ぶしつけに、お声を掛けさせて頂いたこともあります。

山田さんは、見ず知らずの私に、気さくにお話ししてくださいました。

 

日本映画専門チャンネルさん、各民放各局さん、NHKさん。

山田太一作品を、是非再放送してください。

よろしくお願いします。

ドラマ「沿線地図」で流れていた甲斐バンドの曲。

かつて大和書房という出版社が、山田太一や倉本聰のシナリオ集を出していて、私は観てないドラマ数冊を残して、ほとんど買いました。

現在では絶版になっています。

 

ドラマの終盤、酔客役の中野誠也が、商店街をフラつきながら、「ヒーロー」のサビを口ずさむシーンがあるのです。

そこで、「沿線地図」のシナリオで「ヒーロー」の流れるシーンがト書(セリフではない説明の部分)では、どうなっているのかを確かめてみました。

 

そこでは「ヒーロー」ではなく、桑江智子の「私のハートはストップモーション」を口ずさむト書となっていました。

 

当時、ヒットチャート1位あたりを賑わせていた曲を演出家が採用したのでしょうか。

このシーンでは曲の頭から終わりまでが流れました。

また、岸惠子がおかみさん役だった電気屋の店頭でも、「ヒーロー」は使われていました。

 

あわせて、サザンの「気分次第で責めないで」もチラチラ使われていましたね。

スナックかもめでも、その時代のヒット曲は、よく流れていました。

 

本日はこれで終わりです。

おやすみなさい。

HERO(ヒーローになる時、それは今) 甲斐バンド

HERO (ヒーローになる時、それは今)

HERO (ヒーローになる時、それは今)

  • 甲斐バンド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

光と影を映す だからドラマはおもしろい (100年インタビュー)

光と影を映す だからドラマはおもしろい (100年インタビュー)

追悼・谷村新司。愉快なチンペイさんが逝く。

栄光への脱出 - アリス武道館ライヴ (Live)

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

 

チンペイさん、という言葉がネットを飛び交っています。

これが若き日の、谷村新司のニックネームだということを、初めて知った人も多いことでしょう。

 

ということで、今日は谷村新司とアリスの特集。

懐かしネタ満載で、お送りします。

1曲目。

涙の誓い  アリス

涙の誓い

涙の誓い

  • アリス
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
涙の誓い

涙の誓い

  • Universal Music LLC
Amazon

これが、アリスブレイクのキッカケとなった「冬の稲妻」に続くシングル。

このスマッシュヒットによって、アリスの人気は一躍高まった。

アリスが売れない頃の、懐かしい話をしよう。

私が中学生の頃だ。

当時の深夜放送では、オールナイトニッポンとセイ・ヤング、この両ライバルがしのぎを削っていた。

しかし、残念なことに、九州ではセイ・ヤングを放送しているラジオ局はなかったのだ。

(私的にはそうなのだが、もし放送していたことを知っている人がいたら、ぜひ教えていただきたい。)

 

そのため、チンペイさんとバンバンのセイ・ヤングは、聴きたくても聞けない、まぼろしの番組だった。

巷の噂で、めっぽう面白いということは知っていた。

 

だから、ワニ・ブックスから出ていた本を買って読んだりしていた。

(「天才、秀才、バカ」。リスナーのハガキで構成された、チンペイとバンバンの大喜利コーナーをミニ文庫化したもの。)

 

ところが、この連続ヒットで、アリスはNHK・FM でスタジオライブをやることに。

やっとウワサの、チンペイ節が聴ける。

当日、カセットテープの録音スタンバイをして、放送が始まるのを待った。

そして、ライブが始まった。

 

ウワサに違わぬ面白さだった。

武田鉄矢のしゃべりにも劣らない。

これで、みんなアリスにハマったのだと思う。

 

ところが、アリスを全国区にした、そのウワサの録音が、今、YouTubeで聴ける。

これだ。

アリス スタジオライブ 1977

笑えるでしょう❓

おもろいでしょう❓

 

私的には、このライブこそが、アリスだった。

翌年の武道館ライブよりも、何よりこれだったなぁ。

 

やはり、人の原初体験というものは恐ろしい。

この1977年のライブでアリスを初めて聴いて好きになり、2年後の1979年、TVのザ・ベストテンで甲斐バンドを初めて見て、また夢中になった。

 

皆さん、これを聴いたらもう満足でしょうが、もう少しお付き合いを。

2曲目。

帰らざる日々  アリス

帰らざる日々

帰らざる日々

  • アリス
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

帰らざる日々 (クラシックCD付)

これは、谷村新司メインボーカル。

 

どういうわけか、ラジオのパーソナリティとしての顔は、めちゃ弾けてバカをやっているのに、音楽家としての作品は、すごくシリアスで重い。

 

これはよくある傾向で、中島みゆきも甲斐よしひろも、その他多くのアーティストがそうだった。

その反面、表裏がなく、見かけどおりなのが、長渕剛や山崎ハコだったな。

夢去りし街角  アリス

夢去りし街角

夢去りし街角

  • アリス
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
夢去りし街角

夢去りし街角

Amazon

東芝EMI の頃。みんな売れない時代があった。

かつて、東芝音楽工業というレコード会社があった。

加藤和彦、北山修、はしだのりひこの3人が結成した、フォーク・クルセダーズは、ここから「帰ってきたヨッパライ」を出したのだ。

 

EMI といえば、日本でビートルズのレコードを販売したレコード会社。

1973年、同社はイギリスのEMI グループの資本参加を受け、東芝EMI と改称。

 

福岡のライブハウス「照和」から東京へ進出したチューリップの財津和夫は、ビートルズ狂であったから、当然のごとく、この会社に所属した。

 

1970年代半ばには、アリスのほかにもチューリップ、甲斐バンド、オフコースと、のちに大ブレイクするバンドがひしめいていた。

 

しかし、アリスも当初は、ホントに売れなかった。

自分たちのオリジナルではシングルを出せず、4枚目の「青春時代」5枚目の「二十歳の頃」は、なかにし礼・作詞、都倉俊一・作曲だ。

 

ようやくヒットした「今はもう誰も」でさえ、佐竹俊郎というミュージシャンのカバーだった。

だから、アリスが一命を繋いでいたのは、将来性を買われていたこともあっただろうが、谷村新司という稀代のラジオパーソナリティの存在だったとも言える。

 

ちなみに、小田和正のいたオフコースも、初期の売れない時代には、メンバー以外の作家から曲の提供を受けている。

 

チューリップは、大ヒットした「心の旅」の次のシングル「夏色のおもいで」の作詞を、姫野達也から松本隆に変更させられるという、苦い経験をした。

しかし、それが契機で筒美京平・松本隆の黄金コンビが生まれたということだ。

 

RCサクセションは、デビューは東芝だったが、さっぱり売れず、ポリドールから出した「シングルマン」が廃盤から再発されて売れ始め、全盛期はキティレコードにいて、その後また東芝に戻ってきた。(紆余曲折あり。)

それでは、最後の曲。

砂の道  谷村新司

砂の道

砂の道

  • 谷村新司
  • 歌謡曲
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

私が学生の頃、生きる自信がなく悩み抜いていたとき、友人から谷村新司のソロを聴いたら、と勧められた事がある。

 

底が無いくらい、深い人生の闇を歌う谷村新司がいたからだ。

この曲も、そんなときに聴いた曲。

 

人生の後半はとてつも無く偉い先生で、文化人になってしまったが、私の心の中の谷村新司は、チンペイさんのままだ。

 

チンペイさん、さようなら。

そして、苦しかった青春時代を支えてくれた、谷村新司さんのご冥福を心からお祈りします。

海猫

ロックでいくぜ❗️よい子の国のガキどもへの哀歌。

BLUE(限定盤)(UHQCD/MQA)

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

 

本日は、不良になりきれない、よい子の国のガキどもを、叱咤激励する歌の特集。

 

まあ世の中、腐り切った老害ジジイどものなすがままに、洗脳されてるよ。

そこでは何でもハイハイとオベッカを使う、お坊ちゃんお嬢ちゃんばっかりが幅を効かす。

 

そんな世の中になっちまって、ちったぁマトモな青少年達よ、少しは怒れよって話。

1曲目。

ロックン・ロール・ショー  RCサクセション

ロックン・ロール・ショー

ロックン・ロール・ショー

  • RCサクセション
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

よい子の国の悪人たち。その1。ジャニーズを取り巻く業界とメディア。

ジャニーズ問題で、業界は大変だねえ。

わずか半年で、ジャニー喜多川は世界犯罪史上に残る性犯罪者になっちまった。

ついこの前まで、業界のキングとして君臨していたボスの組がさあ。

 

業界人とマスコミ、メディアの手のひら返しは醜悪そのものさ。

お前ら、弱い者いじめしか、できねえんだろう。

 

腐った業界の内側を支えている黒幕は、まだ登場してないぜ。

 

東山紀之や井ノ原快彦に、何ができるっつうの?

誰が裏で糸引いてんのさ。

そいつを叩かない限り、同じことは繰り返される。

 

出てこいよ。

引っ張り出せよ、メディアの犬ども。

出来っこねえよなあ、豚足どもには。

また、BBCさん、よろしくおたの申します。

2曲目。

激しい雨が  THE  MODS 

激しい雨が

激しい雨が

  • THE MODS
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
激しい雨が

激しい雨が

  • Sony Music Direct (Japan) Inc.
Amazon

よい子の国の悪人たち。その2。統一教会と大の仲良し、自民党と元ボス。

統一教会の解散は、被害者の皆さんにはありがたいことだろう。

でも、なんで今なのさ。

 

そもそも統一教会と一番お友だちだったのは、安倍晋三元首相だろ❓

アイツが殺されてから、大きく取り沙汰された問題だよなぁ。

 

統一教会解散命令と、ベッタリだった元ボスの国葬。

これ矛盾してるやろ❗️

 

ボスが死んでから陽の目を見る構図は、ジャニーズ自民党、おっと言い間違えた、ジャニーズ事務所と一緒だよなぁ。

 

腐ったボスの元子分どもが、オレたちまで巻き添えを喰らう前に、てなわけで、解散命令を出したんだろう。

違いますかね、岸田文雄君。

 

ロージー  ザ・ルースターズ

THE ROOSTERS

THE ROOSTERS

Amazon

久しぶりに、ルースターズを聴いた。

博多のロックが炸裂しているな。

よい子の国の悪人たち。その3。能年玲奈を干し続ける、レプロエンタテイメント社長・本間憲。

ジャニーズ事務所の問題が大きくなった事で、ようやくタレントや芸能人の人権問題が浮上しつつある。

SMAP同様、事務所からの独立問題で、能年玲奈さんは干され続けてきた。

もう、10年に及ぶ時が経過した。

 

若い青春の盛りを、過去の因習に阻まれ、失われた時は帰ってはこない。

 

まだ、日本の民放各局は、レプロエンタテイメントの言いなりでい続けるのか❓

どうなんだい❓

 

ジャニーズをあーだこーだ言うんなら、能年玲奈さんを使え。

レプロを問題にして、報道せよ。

やってる事が矛盾しているだろうが❗️

レプロに怒れよ、てめーら。

荒野に立つ  のん

荒野に立つ

荒野に立つ

  • のん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

10年間、干され続けて、能年玲奈さんは、この曲を生み出した。

逆風にもよくめげず、ここまでたどり着いた。

 

涙も、怒りも、悔しさも、芸能活動に全部、ぶつけて来た。

ものすごい逆境を抱えたことで、大きく成長したはずだよ。

 

がんばれ。

このブログは、能年玲奈を、応援し続けるよ。

 

奴隷天国 エレファントカシマシ

奴隷天国

奴隷天国

  • エレファントカシマシ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

もういい加減にして欲しい。

エンターテイメントの名が泣くよ。

奴隷だらけの世の中さ。

立ち上がる奴はいねえのか❓

 

最後の曲。

BAD BOY      ECHOES 

Bad Boy

Bad Boy

  • ECHOES
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Bad Boy

Bad Boy

  • Sony Music Direct(Japan)Inc.
Amazon

若者が社会へ無関心になっていった歴史を、下の記事に書いた。

なぜか、今このブログで一番読まれている。

 

この詞のとおりだ。

壁を壊せ。負けん気が、君の未来を創る。

 

それでは、このへんで。

おやすみなさい。

奴隷天国

ディスクブログおすすめの名曲選。ジャニーズ報道に見る便乗型の暴力。

Maybe this is what New York is all about

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

本日は、タイトルどおり、私が書いてきたディスクブログの中でも、とりわけおすすめの名曲をお送りします。

 

そして、以前書いた記事で、その後どうなったかの振り返りも、やってみたいと思います。

そういうわけで、まずは曲から。

渇いた街  甲斐よしひろ

渇いた街

渇いた街

  • 甲斐よしひろ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
渇いた街

渇いた街

  • ポニーキャニオン
Amazon

この動画は、私のYouTubeチャンネルで上げていますが、1万回以上再生されていまして、すごいいい曲です。

 

個人的には、80年代以降の甲斐バンドの曲と比べても遜色なく、詞とかを聴いてもむしろ好きですね。

初期の甲斐バンドに回帰したような、聴くほど心に残る感じがある、シブい名曲だと思います。

ジャニー喜多川、性加害問題の今。便乗型、言葉の暴力。

私がこの問題を最初に取り上げたのが、2016年。

SMAPがジャニーズ事務所を退所しようという動きを見せたあとの、冠番組での生謝罪がキッカケでした。

 

元フォーリーブスの北公次さんが告発本を書いた時から、私にはすごく気になっていた事で、沈黙するテレビ局やマスコミに、ずっと不信感がありました。

 

そして今年、BBCのドキュメンタリーで取り上げられて以来、この問題は大きな動きを見せ、今や、うって変わってジャニーズ総スカンのありさまです。

 

まあ、よくもこう、どの口が言うかというくらい、沈黙していたメディアが叩きまくっています。

 

私がネットでウオッチしていたメディアのうち、BBC の放送以後、当初から報道していたのは、週刊文春、弁護士ドットコム、日刊ゲンダイ、共同通信、ハフポスト日本版、ニューズウィーク日本版、朝日新聞GLOBE 、J キャストニュース、THE HEADLINE、日刊サイゾー、 サキシル、ダイアモンドオンラインなど、10数社ほどでした。

 

それは、私のツイートを見ていただければわかります。

見つけたものは、すべてツイートしていましたから。

 

日本人というのは、まったくどうして、こう風見鶏が多いのだろう。

戦前の日本は、天皇陛下万歳、鬼畜米英、負けられません勝つまでは、兵隊さんありがとう。

戦後になると、瞬く間に、民主主義万歳、マッカーサーと昭和天皇は並んでチーズ。

便乗型の右向け右、信念なんぞ持たない島国の奴隷根性丸出しです。

 

もはやこれだけ問題になったのだから、ジャニーズ事務所はあり方を変えて行かざるを得ないでしょう。

わかっていながら、みんなが叩くと我も我もとコテンパンに叩く。

呆れたもんだ。

私には、GACKTの言い分の方が、まともだと思いますよ。

I   Love  You ,  SAYONARA       チェッカーズ

I Love you,SAYONARA

I Love you,SAYONARA

  • チェッカーズ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
I Love you,SAYONARA

I Love you,SAYONARA

  • ポニーキャニオン
Amazon

これは、チェッカーズのベース・大土井裕二が書いた曲。

これは当時カラオケでよく歌ったもんです。

とにかく好きな曲でした。

フミヤがやたらにカッコいい。

 

これは、当時の安倍晋三内閣が、森友問題や公文書偽造問題で、やたら嘘をつきまくっていた頃書いた記事で紹介しました。

時事ネタなので、今読んでくれる方は少ないだろうと思い、ここに再度紹介します。

森友・公文書改ざん問題のその後。

つい最近、改ざんを機に自殺した赤木さんの妻・雅子さんの、森友文書不開示の決定が裁判所でなされました。

妻の雅子さんは、今も闘っておられますが、国も裁判所もまったく取り合わず、という状況はそのまま変わっていません。

 

まったく腐った権力とは、どうしようもないものです。

改ざんの元凶たる当の総理が殺害されるという筋書きは、まさにミステリー小説まがい。

 

それでも腐った果実は、次の代に引き継がれている。

今の岸田という蜜柑も、これまた腐っています。

忘却の空  SADS

忘却の空

忘却の空

  • sads
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
忘却の空

忘却の空

  • アーティスト:Sads
  • EMIミュージック・ジャパン
Amazon

この曲は、言わずと知れた、クドカン初の連ドラ「池袋ウエストゲートパーク」主題歌。

私はドラマ好きなので、結構ドラマ絡みの推し記事を書いてます。

 

これもその流れですが、ドラマ主題歌としては出色のカッコよさ。

21世紀の日本のロックがこれだ、という感じで、好きな曲です。

 

「あまちゃん」を観なければ、私はクドカンに出会わなかったかも知れず、この曲やIWGP も知らないままだったかも。

今、NHKで「あまちゃん」、「池袋」もAmazonプライムで観られます。

観てない方は、是非ともご覧ください。

のんこと能年玲奈さんの、その後。

芸能界の不条理を追及するならば、今はジャニーズよりのんさんだと思います。

 

映画や音楽、声優としても活躍しているのんさんですが、いまだにテレビ各局の連ドラで、その姿を見ることはできません。

本名を召し上げられ、活躍の場も制限されているのは事実でしょう。

 

これこそ今、取り上げて欲しい。

彼女に罪は無い。なのに、事実上干されている。

これって、誰が仕切ってんだよ、バカヤロー。

そう思いませんか?

 

どこかに、業界を支配しているボスがいるに違いないのだ。

沈黙もまた暴力であることを、ジャニーズ問題で、みんなは知ったはず。

だからこそ。

今こそ声を上げよう。

 

「あまちゃん」を観ているみなさん、是非「能年玲奈」を復活させましょう。

今こそ、チャンスですよ。

このブログは、のんさんのテレビドラマ復活まで、あくまで応援し続けます。

蒼い旅  岸田智史

蒼い旅

蒼い旅

  • 岸田智史
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
蒼い旅

蒼い旅

  • Sony Music Direct(Japan)Inc.
Amazon

このブログのテーマのひとつに、思春期の若い子達へのメッセージがあります。

 

これは、自分が悩んで苦しんで、いじめにもあいながら、なんとか生きてこれた、という体験の裏返し。

過去の自分への、一人語りでもあります。

 

そこで紹介した曲の中でも、一番よく聴いた歌がこれでした。

生きたくて 生きてきた 訳じゃないのに

死ねなくて 生きてきた ただそれだけなのに 

この詞が、当時の自分のすべてを凝縮していました。

 

だから、今の大人達、私を含めてですが、なんという世の中を作り上げてしまったのだろう、という思いがある。

 

#病み垢さんと繋がりたい、というX(Twitter)のハッシュタグがあります。

それで、検索してみてください。

 

今も、当然あります。

むしろあった方が自然かもしれない。

 

しかし、それを利用して悪事をはたらく大人がいる。

これも、若い子達の弱みにつけ込んだ、便乗型の暴力でしょう。

コイツら許せねえ、と思って書いた記事が下の記事。

 

ネット社会の闇は深いまま、続いていくのでしょう。

街~南代官山一丁目  パル

これもドラマ推しの記事で紹介しました。

 

作詞・作曲は、知る人ぞ知るになってしまった、荒木一郎。

荒木一郎という人は才人で、俳優でもあり作家でもあり、と多方面に活躍した方です。

沢田研二主演のドラマ「悪魔のようなあいつ」に出ているのを、観たことがあります。

 

彼が桃井かおり主演のドラマ「ちょっとマイウェイ」のサウンドトラックを作り、コーラスグループのパルが、劇中歌として歌ったのが、この曲。

 

ドラマについては、下の記事をご参照ください。

これはリアルタイムで観た大好きなドラマでした。

 

そして音楽がすごくいいので、サントラ盤を買いました。

これはその音源から取った動画です。

私があげたYouTubeのチャンネルで、2万回近く再生されてます。

家族  小山卓治

家族

家族

  • 小山 卓治
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

これは、2017年に書いた「家族の歌」で紹介しました。

相当前なので、ここに再度アップします。

 

この記事では、ポップな歌からシリアスな歌まで紹介したのですが、これがラストの曲。

詞がすごくいいですね。

この先どこへ行ってしまうのか、といった宿命のようなものと同時に、その危うさの中でもしたたかに生きていく、という固い意志のようなものが感じられて…。

 

是非聴いて欲しい1曲です。

家族

家族

  • Sony Music Direct(Japan)Inc.
Amazon

それでは、最後の曲。

真夜中のヒーロー  エレファントカシマシ

真夜中のヒーロー

真夜中のヒーロー

  • エレファントカシマシ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

闘い続ける真夜中のヒーロー、これが永遠の私のテーマ曲です。

 

今は鳴りを潜めていても、必ず何事かを成し遂げてやる、という熱い心。

この気持ちだけは、忘れずにいたい。

 

それでは、今夜はこの辺で。

おやすみなさい。

真夜中のヒーロー

学校が嫌いな君へ捧げる歌。

timezone

こんばんは。デラシネ(@deracine9)のブログへようこそ。

 

明日から2学期だね、と聞いて、落ち込んでいる君へ捧げる歌の特集。

1曲目。

Strange  People          ECHOES 

Strange People

Strange People

  • ECHOES
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Strange People

Strange People

  • Sony Music Direct(Japan)Inc.
Amazon

この歌を聴いたか?

君は、変わり者と呼ばれているか?

自分だけ違うと思っていないか?

 

そんなこと、まったく気にする必要はない。

学校のヤツらが大嫌いで、上等さ。

 

この先、長い道程(みちのり)を歩き続けるのは君自身であり、通りすがりの他人のほざく悪口なんかに、聞き耳を持つのは馬鹿げたことだ。

 

学校というものは、公共の教育機関がまったく整っていない、アフリカやアジア、飢えた子ども達のいる場所にこそ必要だ。

この日本では、もはや学歴エリートを目指す官僚主義者や、上流階級の子弟養成機関でしかなくなっている。

 

学びたい何かが無く、仲良くしたい友達もいない学校など、何の価値があるか。

日本の学校は、カリキュラムを最低レベルまで学習させる能力さえ失ってきたのだ。

 

勉強と学問がまったくの別物であることは、以前このブログで書いた。

是非、一読を請う。

知識を詰め込むことを勉め強いる勉強には、まったく意味が無い。

学ぶ喜びを削ぎ、知的好奇心を枯らす弊害こそあれど、学問への情熱とは無縁なものだ。

 

今の学校に意味があるとすれば、無味乾燥な繰り返しの日常に、耐え得る奴隷根性を叩き込まれるのに役立つくらいだ。

 

今の日本では、学ぶ意志さえあれば、学ぶ場所、時間を問わず、いくらでも自分で選択できる。

ほとんど独学で、その分野における泰斗として名を残した作家の松本清張や、作曲家の武満徹のような人物もいる。

 

自分の可能性を、信じて見ることだ。

事の成否は、問題ではない。

自身の仕事の痕跡とその達成感は、必ずのちのち自信となる。

 

もし、学校へ行くことを迷っている自分がいたら、こんな先生や大好きな友達がいるかどうか、自分に聞いてみるといい。

僕の好きな先生  RC サクセション

ぼくの好きな先生

ぼくの好きな先生

  • RCサクセション
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

おれにもいたな、こんな先生が。

歴史が好きで、いろんな話をムダにしてくれる、面白い先公だったよ。

 

今どき、こんな先生はいないだろうな。

いたらすぐ、クビになってるよ。

 

らせん階段  甲斐バンド

らせん階段

らせん階段

  • 甲斐バンド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
らせん階段

らせん階段

  • EMIミュージックジャパン
Amazon

長いぞ、これから人生は。

迷うし、悩む。

だが振り返れば、学校なんかどうだってよかった事に気づく。

 

忍耐と隷属をマスターするために、学校へ行くのもいいだろうよ。

誰の反対も受けないしな。

一番穏やかで、親孝行とか言われるしな。

 

それでも、考えてみるんだ。

このさき、どう生きていくかを決めるのは、自分だけになる。

そのとき、後悔しない生きざまを選ぶことができるか?

よく考えろ。

 

望みを捨てろ  吉田拓郎

望みを捨てろ (Live)

望みを捨てろ (Live)

  • よしだたくろう
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
望みを捨てろ (Live)

望みを捨てろ (Live)

  • Sony Music Direct(Japan)Inc.
Amazon

これだけは、言っておく。

妻と子だけは守りたい、なんて大人にはなるな❗️

これが、おれからのメッセージだ。

 

それじゃ、達者でな。

また、会おう。おやすみ。

HURTS

流されゆく日々の歌。終わりゆく夏に。

さよならの今日に

こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。

本日は、流されゆく日々の歌、と題してお送りします。

 

今、一番気に入っている曲。

さよならの今日に  あいみょん

さよならの今日に

さよならの今日に

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
さよならの今日に

さよならの今日に

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥407

この曲は、メロディはもちろんだけど、詞がね、もうとんでもなくいいです。

あいみょん、この若さで、去りゆく日々への惜別と、生きることの悲しみを、もうすっかり感得している。

これがね、ほんとに信じられない。

 

わかってても、こんなふうに表現できないのが普通ですよ。

しかも、明日への希望と情熱、それもしっかり詞に刻んでる。

これもすごい。

 

これだけのクオリティの曲を書けるというのは、とてつもない才能です。

生きてるうちに、出会えてよかった。

そう思わせてくれる歌であり、シンガーです。

 

2曲目。

そして僕は途方に暮れる  大澤誉志幸

そして僕は途方に暮れる

そして僕は途方に暮れる

  • 大沢 誉志幸
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
そして僕は途方に暮れる

そして僕は途方に暮れる

  • Sony Music Direct(Japan)Inc.
Amazon

これは、80年代のヒット曲。知らない方も多いのでは。

大澤誉志幸は、中森明菜のシングル「1/2の神話」で世に知られたロックシンガー。

 

派手なパフォーマンスで、夜のヒットスタジオなんかにもよく出ていました。

これが代表作。

ザ・ベストテンの2位にランクインしました。

カップ ヌードルのCM に使われたような記憶があります。

 

おまえとふたりきり  エレファントカシマシ

おまえとふたりきり

おまえとふたりきり

  • エレファントカシマシ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

この曲は、夏の終わりとともに消え去りゆく男と女、そんなイメージですね、私の中では。

甲斐バンドの「危険な道連れ」に並び、好きな道行きものの1曲です。

 

コロナ禍がようやく去りつつありますね。

お盆を故郷で過ごした方も多かった事でしょう。

 

いまだに患者はいるに違いないのに、この変わり様はなんだろうと思いますね。

もう死病とは言えなくなったという事なんでしょうが、この3年ほどが過ぎた今、私は悪い夢を見たあとのような気がしています。

 

当時、国政をぶっ壊し、日本を三流国以下にした首相は凶弾に倒れ、残ったのは負の遺産だけでした。

今も悪政は引き継がれ、国民の声を無視し続け、元首相の演説口調はそっくりそのまま。

現首相はやりたい放題、支持率などへとも思わず、国の中枢でのさばっています。

 

もう、正直言って、声を上げるのもバカバカしく思えてしょうがない。

けれど、声は上げ続けないと、香港みたいになってしまうのですよね。

 

この本はぜひご一読ください。

いかにこの国が、奈落へ落ちたかが分かります。

 

秋の気配  オフコース

秋の気配

秋の気配

  • オフコース
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

オフコースのハーモニーは、癒されますね。

80年代、オフコースは人気絶頂でした。

これはベスト盤のカセットテープに入っていて、買って聴いていました。

 

男性の心が恋人の女性から離れてゆく心模様を歌った、小田和正の詞が印象的です。

なぜか私はこの曲のメロディが好きらしく、いつのまにか口ずさむことがあります。

秋の気配

秋の気配

  • EMI MUSIC JAPAN INC.
Amazon

 

SO YOUNG          THE YELLOW MONKY 

SO YOUNG (2013 Remaster)

SO YOUNG (2013 Remaster)

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  •  
  • provided courtesy of iTunes
SO YOUNG

SO YOUNG

  • Ariola Japan
Amazon

これは、あいみょんの曲とモチーフが似てますね。

吉井和哉自身の感性が、つかみ取った詞です。

私はこの16インチCD を20年ほど前に買って、ずっと聴いています。

 

それでは、最後の曲です。

1980年代後半に入ると、甲斐よしひろは、ハードボイルド小説に傾倒していきます。

曲は、青春の痛みや挫折、男女の愛のかたちを歌うものから、硬派でフィクショナルなものへ変わっていきました。

 

もしかしたら、私も変わりつつあるのかもしれない。

このブログを通して、私は自身の青春の、忘れ得ぬ傷口が癒えていくのを感じています。

そのとき、私は何を書き続けていけばよいのか?

 

しかし、私は書くことが、なくなったわけではない。

今の自分について、素直にさらけ出していけばよいだけだと思っています。

新宿  甲斐バンド

新宿

新宿

  • 甲斐バンド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

それでは、今夜はこの辺で。

おやすみなさい。

ガラスの動物園