掌の音楽小説について。
これから、新しい試みをやってみたい。
端的に言えば、1曲の音楽をテーマに、ごく短い掌の小説、散文詩を書いてみようというものである。
曲の醸し出すオーラをソースとして、湧き出てくるイマジネーションを、物語にする。
これが、そのテーマである。
日本文学は短編小説宝庫。
昔から日本文学は、和歌、俳句、短編小説を得意としてきた。
長編では、「源氏物語」「平家物語」「太平記」などが有名だ。
だが、平安時代に女流貴族により、漢字にひらがなを当てて日本語を紙に書く、いわゆるかな文字の発明が「万葉集」「古今和歌集」などの和歌につながり、室町時代の俳諧連歌、江戸時代の俳句の隆盛に連なってゆく。
散文においても、「今昔物語」「伊勢物語」「徒然草」「方丈記」、能や狂言、井原西鶴の短編集などがある。
明治以降は文芸誌に掲載する小説は基本的に短編小説であったことから、作家はことに短編小説を多く書いた。
夏目漱石の新聞連載による発表形式は、純文学においてはむしろ、傍系であった。
芥川龍之介、太宰治、森鷗外その他、大正、昭和に活躍した文豪は、たいてい短編作家が多い。
私が試みようとするのは、「伊勢物語」や松尾芭蕉の紀行文「奥の細道」などと同じく、和歌や俳句と散文の、二つの異なる表現形式の合体、という意味で似通ったものになろうと思う。
大変な大風呂敷を広げたが、そう大したものではない。
その歌に感情移入した戯作に過ぎないので、お気軽に読んで頂きたい。
上手くいくかどうか、判定頂くのは、読者諸氏次第である。