こんばんは。デラシネ(@deracine9)です。
本日は、日本のフォークソング名曲集と題して、お送りします。
ロックだ、フォークだ、歌謡曲だ、というジャンルは、あまり意味の無いことですが、時代の潮流の中では、大きな意味を持つことがあるのですね。
そういう視点を含めて、この時代を見ていきたいと思います。
それでは、1曲目。
メチャメチャ懐かしい。
八十八夜 N.S.P
- アーティスト: N.S.P,天野滋,中村知子
- 出版社/メーカー: テイチクエンタテインメント
- 発売日: 1999/03/25
- メディア: CD
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1970年代には、ミュージシャンになるための登龍門として、ヤマハポピュラーソングコンテスト(通称:ポプコン)というのがありました。
プロを目指すには一番手っ取り早い、地区予選から全国大会へというコンテストで、ここから相当のミュージシャンが生まれています。
中島みゆき、八神純子、チャゲアス、世良公則&ツイスト、クリスタルキング、佐野元春、あみん、長渕剛などなど。
ちなみに、これには甲斐よしひろも、1973年の九州大会で優勝して全国大会への切符を手にしたのですが、ヤマハへ版権を取られるのが嫌で、出場しなかったのですね。
甲斐よしひろは翌年、文化放送主催のハッピーフォークコンテストの全国大会で優勝し、プロデビューへの道を拓きました。
そのときの受賞曲が「ポップコーンをほおばって」ですが、なにせフォークソングコンテストですから、曲調はフォークっぽいアレンジです。
このときの録音は、のちに甲斐が自分の番組で流したため、今はYouTubeで聴くことが出来ます。
N.S.P も、第5回大会に入賞して、デビューしたのですね。
最初は、ニュー・サディスティック・ピンクというバンド名で、ロックをやっていたそうですが、フォークグループとして売り出すため、略してN.S.P としてデビューしました。
これも時代のなせる業ですね。
しかし、リーダーで、メインヴォーカルの天野滋の歌声は、この頃の叙情派フォーク路線に、ジャストフィットでした。
デビューの翌年、1973年にリリースした「夕暮れ時はさびしそう」がヒットして、アルバムはオリコン4位にランクインしました。
1973年といえば、かぐや姫の「神田川」が大ヒットした年です。
「八十八夜」という曲は、N.S.P の中でも、私の一番好きな曲です。
編曲は、山田太一さんのドラマで音楽を多く手がけた、福井竣さん。
アレンジもいいですが、天野滋のちょっと心もとない歌声がよいスパイスになっている。
詞もいい。
好きだった元彼を忘れられないまま、嫁いでいこうとする女心を歌って、いつまでも記憶に残る歌詞です。
この時期のアーティストのディスコグラフィを見て思うのですが、とにかくすごいペースで、シングル、アルバムを出している。
年にシングル、アルバムとも、ほぼ2〜3枚です。
これは、当時のアイドル歌謡曲のリリース・サイクルなんですね。
とにかくヒット曲を出し続けないと、あっという間に消えてしまう、そんな危機感に溢れているのです。
2002年にオリジナルメンバーで再結成をしたとき、天野滋はインタビューに答えて、70年代は、次はダメなんじゃないかと追い詰められているようで、苦しかったと言っています。
せっかく、再結成して活動を再開したN.S.P でしたが、リーダーの天野滋は、2005年、脳内出血のため、逝去しました。
52歳。早すぎた死でした。
N.S.P の曲は小粒ですが、 時代を感じさせながら、普遍性を持った佳曲がたくさんあります。
最近では、ほとんどの曲を配信しているようですから、この曲が気に入った人は、聴いてみてください。
2曲目。
風来坊 ふきのとう
ふきのとうは、北海道出身の細坪基佳と山木康世が結成したフォーク・デュオ。
1974年、「白い冬」でデビューしました。
「白い冬」という曲の私の想い出は、私がギターを練習し始めた頃、高校の先輩から、これから練習しろよ、と勧められたことです。
なぜなら、この曲には、初心者に立ちはだかる、F コードがない!
覚えるコードが少ないから、初心者にはうってつけの曲なのです。
「風来坊」に話を戻します。
ふきのとうでは、私が一番好きな曲。
山木康世が作曲して、細坪基佳がメインヴォーカルをとるというのが、 ふきのとうのスタイルでした。
透き通るような細坪のヴォーカルが際立って、山木の曲に乗っていた。
ふきのとうとN.S.P は、とても立ち位置が似通っていて、叙情派フォークの主流として女性受けのするグループでした。
N.S.P も岩手の出身で、どちらも北国の人なんですね。
どちらの世界も、季節や空模様、時のうつろいに敏感で、ぬくもりや暖かみをモチーフにした楽曲が多い。
冬が長いから、開放的な明るさはないけれども、それが時代の空気に合っていた。
天野滋亡きあと、N.S.P の中村、平賀と、ふきのとうの細坪は、3人で、スリーハンサムズというユニットを組んで活動しています。
70年代に青春を過ごしたのは、今の団塊の世代です。
60年代の、自分たちで社会を動かそうという激動の青春が、日米安保闘争の終焉とともに終わりを告げ、その空白を埋めるように、吉田拓郎、かぐや姫、井上陽水といった、個人の感情や生活感を歌う歌が、青春とともにありました。
ふきのとうや N.S.P は、その第2世代と言えるのではないでしょうか。
これらのアーティストに共通していることは、基本としてテレビには出ない、ライブ活動を中心にする、ラジオの深夜番組のパーソナリティを務めて、自曲のプロモーションを行い、若者層の支持を拡げていったことです。
これは、ごくおおざっぱにいえば、すべて吉田拓郎が確立したものだと言える。
この他にも、拓郎が始めた新機軸は、いまだに日本の音楽シーンの礎をなしています。
ほんの一例をあげると、今では当たり前の、コンサートツアーも拓郎が始めたものです。
それまで、地方でのコンサートは、会場に備え付けの機材や音響システムに依存することが多かった。
しかし、それだと会場の良し悪しで、ライブの質に大きな差が出るし、会場ごとにリハーサルの中身を試行錯誤しなければならない。
それを、ツアーメンバーを組んで、東京でリハーサルを行い、会場に機材を持ち込めば、どの会場に行っても同じクオリティの演奏が出来る。
とにかく、70年代はおろか、現在に至るまで、拓郎の日本のミュージックシーンにおける功績は、計りしれないものがあるのです。
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余談だが、ふきのとうと甲斐バンドは、同じ1974年デビュー。
当時、こんなエピソードがありました。
神田共立講堂でのデビューコンサートのあと、フジテレビのスタジオでのこと。
デビューほやほやの頃は、甲斐バンドもテレビに出ていました。
そこで、ふきのとうといっしょになりました。
そこで、番組のプロデューサーは、ふきのとうはチヤホヤするものの、
「何? 甲斐バンド? 甲斐バンドなんてイカバンドだ。イカバンド、出番だぞ」
マネージャーだった西田四郎は、甲斐の顔から血の気が引くのがわかったそうです。
甲斐は、「あいつの番組には絶対出ない」と吐き捨てたといいます。
その相手は、当時、フジテレビの花形プロデューサーでした。
このエピソードは、田家秀樹著「ポップコーンをほおばって」にあります。
ポップコーンをほおばって―甲斐バンド・ストーリー (角川文庫)
次の曲。
わかれうた 中島みゆき
中島みゆきの70年代の名曲。
みゆきさんも、北海道出身なんですね。
やはり、北国の人が作った歌だなぁと思います。
みゆきさん、若い頃は、吉田拓郎の大ファンで、楽屋に花束を持って行ってたらしい。
その後、歌い始めてからは、全国のコンテスト荒らしとして名をはせた。
当時、拓郎はみゆきのことを、女岡林、と呼んでいた。
岡林とは、言うまでもなく、拓郎がブレイクする前から大きな存在感を放っていた、フォークの大御所、岡林信康のこと。
どこが岡林なのか、よくわからないけれど、デビュー前から一目置いていたことは間違いないでしょう。
みゆきも、やはりポプコンからデビューして、コッキーポップという、ポプコン出身のアーティストが出演するテレビ番組に出たことがありました。
夜のヒットスタジオにも、この曲で出てました。
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私のみゆき体験は、アルバム「愛してくれと云ってくれ」からでした。
長い間、オールナイトニッポンのパーソナリティをやってて、歌と彼女のキャラクターの落差に驚いた人は、たくさんいたはずです。
番組に来たハガキで、みゆきは、ぺったんと呼ばれていた。
由来は、このアルバムのジャケットに写っていたみゆきの胸が、ぺったんこだったことによるものらしい。
それをネタに、自分をぺったんと呼ぶ自虐趣味にも、ちょっと唖然。
まじめになるのは、番組の最後だけ。
まぁ、これが出来るのがラジオの深夜放送だったのですね。
このアルバムの最後の曲「世情」。
曲によって唄う声を変える、みゆき節。
この曲が、ある学園ドラマのクライマックスで流れたのです。
三年B組金八先生第2シリーズ。
「腐ったみかんの方程式」の後編。
校内暴力に荒れる学校で。
生徒を虫ケラのように扱う校長や暴力的な教師を謝らせようと、放送室に立て籠もった生徒たち。
彼らの目的は達せられ、校長たちを解放して出てくるところを、警官たちが次々に手錠を掛けようとして、生徒たちや教師たちと揉み合うシーン。
スローモーションの掛かった映像の中を、この曲だけが延々と鳴り響く。
忘れられない名シーンでした。
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では、次の曲。
思えば遠くへ来たもんだ 海援隊
思えば遠くへ来たもんだの歌詞 | 海援隊 | ORICON NEWS
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これは、ふきのとうの山木康世の作曲です。海援隊とは所属事務所が同じ縁で、書いてくれたらしいです。
海援隊といえば、とにかくライブのしゃべりです。
2時間に2、3曲とかで、聴衆を魅きこむ力はすごかった。
最近の武田鉄矢は、文化放送の朝のラジオ番組で注目を集めているみたいですね。
ですが、なぜ、どういう風に、注目を集めているかが問題なんです。
YouTubeに、次のような動画がアップされています。
タイトルは「【武田鉄矢】TVが報じない朝鮮人の本性。中韓の信じられない実態を暴露! 北朝鮮も韓国も大崩壊」。
信じられないことに、今日の時点でこの動画が 106万回視聴されています。
しかも、ひとつだけじゃない、たくさん似たような動画がある。
この動画は、先ほど紹介したラジオ番組「武田鉄矢の三枚おろし」の 2012年放送分を繋ぎ合わせて編集したもの。
私は、この動画を、最初から最後まで、片言隻句逃さず、聴き入りました。
そして、わかったのは、武田鉄矢は あくまでも黄文雄氏の著作を、驚きを持って紹介しているに過ぎないということ。
黄氏の著作の内容の紹介をしているのは、最初から15分40秒までと、最後の5分間だけなのです。
その中間は、黄氏の説ではなく、視点を変えるためのパラダイム(ものの見方、捉え方)として、フランス構造主義の哲学者・ レヴィナスの書物を引き合いに出しています。
その考え方を用いて、この中国、韓国という国を考えてみようと抱負を述べているのです。
そこには、明らかに、黄氏の論説への、正当な批判を行おうとする意志があります。
そこで、この動画のタイトルです。
「【武田鉄矢】TVが報じない朝鮮人の本性。中韓の信じられない実態を暴露! 北朝鮮も韓国も大崩壊」
このタイトルと動画の見出しのキャプチャだけを見れば、100人中99人は、武田鉄矢も右傾化したな、右よりになったな、と勘違いするでしょう。
そして、アクセスしたほとんどの人は、最初の5分から10分程度を聴いて、武田鉄矢が、少なくとも黄氏の著作に共感を抱いているのだと思うでしょう。
または、最初の5分をすっ飛ばして聴いた人は、黄氏の論説を、武田鉄矢の意見と勘違いするでしょう。
そして、武田鉄矢の変貌に疑問を持った人、武田鉄矢という男に惚れた人だけが、なんだ、いつもの鉄矢じゃんか、と思ったことでしょう。
皮肉にも、動画の20分15秒に、武田鉄矢はレヴィナスの言葉として、
「メディアが伝えている舞台には、演出家がいる」
と紹介しています。
この動画を作った「 演出家」 が企んだのは、事実を歪め、武田鉄矢という著名人が、こんなことを言っているぞ、と思わせること。
目的は、中国、韓国への偏見を助長し、偏ったナショナリズムのプロパガンダとすることです。
だから、自分たちに都合のいい編集をして、最も多くの人が聴かないであろう後半の中間部に、鉄矢の黄氏批判を置いている。
そして、この本の Amazon のレビューを見て、また驚き。
あらゆるメディアに対しての、まっとうな批判能力の欠如が、あちこちに散見される。
こんなに、どこの誰かもよく知らない、一人の人間の意見を盲信してしまうことの恐ろしさを、感じないのか?
これは、ネット社会の盲点というより、もはや常識としてわきまえておかなければいけないことではないだろうか?
- 作者: ロバート・B・チャルディーニ,社会行動研究会
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この YouTube チャンネルの管理人は、明らかにネトウヨだと思われます。
アップしている動画を眺めてみれば、ほとんどが有名人のネトウヨ的発言を編集したものでした。
(追記 2019.8.3)
最初にアップされた動画は削除されましたが、まったく同じ内容の動画が別アカウントでアップされていますので、差し替えました。
こら、鉄矢!
なんばしょっとか、ボケーとして、ほんなこて、こん子は!
脇が甘かぞ、こげなヤツらによかごつされて!
おふくろさんが泣きよるぞ、馬鹿もんが!
おまえ、近頃、たるんどっとやなかとか!
長話になったので、私のおすすめ曲を続けて2曲お送りします。
僕にまかせてください クラフト
- アーティスト: クラフト
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一足遅れの春 とんぼちゃん
ひと足遅れの春の歌詞 | とんぼちゃん | ORICON NEWS
「僕にまかせてください」は、若かりし、さだまさしの曲。
とんぼちゃんは、まさに、この時代のフォークデュオです。
彼らも秋田県の出身。北の人です。
続いて、大御所、かぐや姫の伊勢正三の曲。
置手紙 かぐや姫
これは、かぐや姫のライブ盤に入っていた曲。
伊勢正三は、本当に素晴らしいソングライターです。
なにしろ、南こうせつに勧められて、初めて書いた曲が、「22才の別れ」と「なごり雪」。
こうせつは、負けた、と思ったそうです。
他にも、イルカに提供した「雨の物語」「海岸通」などの名曲を書いています。
- アーティスト: かぐや姫
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それでは、最後の曲。もう1曲、 N.S.P を聴いてもらいます。
時代が透けて見える歌詞です。
歌は世につれ N.S.P
歌は世につれの歌詞 | N.S.P | ORICON NEWS
動画は、再結成後の復活コンサートの音源です。
本日は、フォークソング名曲集、プラス、武田鉄矢に喝!ということでお送りしました。
それでは、お休みなさい。